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力学的境界条件下の問題に対する、任意多角形格子上の構造保存数値解法の構成

研究課題

研究課題/領域番号 23K13009
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分12040:応用数学および統計数学関連
研究機関甲南大学

研究代表者

奥村 真善美  甲南大学, 知能情報学部, 講師 (80913045)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード数値解析 / 構造保存数値解法 / Cahn-Hilliard方程式 / 力学的境界条件
研究開始時の研究の概要

相分離現象を記述する、放物型偏微分方程式のCahn-Hilliard方程式系では、近年Liu-Wuにより新しい力学的境界条件下のモデルが提唱された。力学的境界条件は条件内に未知関数の時間微分を含む境界条件で、上記モデルは、領域内部と境界上の積分量がそれぞれで保存するという、特徴的な保存則を持つ。また、このモデルは領域内部と境界のエネルギーの和が減衰するという、総エネルギー散逸則も持つ。本研究ではこのモデルに対し、その格子点配置が任意である一般の凸多角形格子を用いた、自由度の高い、領域形状の離散化と、前述のモデルの有する構造の再現の両方を実現する構造保存スキームを構成し、その理論解析を行う。

研究実績の概要

本研究ではこれまでに、相分離現象を記述する、放物型偏微分方程式のCahn-Hilliard方程式系で、近年、Goldstein-Miranville-Schimperna(GMS)やLiu-Wu(LW)によって提唱された、2種類の力学的境界条件下のモデルに対し、境界での変分計算も行うことで適切な離散境界条件を導出し、離散変分導関数法に基づく構造保存スキームを空間二次元で直交格子の場合に構成した。当該年度においては、その構造保存スキームの理論解析として、GMSモデルに対するスキームの可解性の結果を得た。その証明では、ある行列の正則性を示す必要があるが、当該年度中盤までの結果では、条件付きでその正則性を導出していた。より具体的には、空間分割幅に応じてどれくらい時間分割幅を絞れば、 少なくともその行列が正則であるかを明確にした。当該年度終盤にかけ、その結果を改良することができ、具体的には、ある特別な場合において、その分割幅に関する条件を課すことなく、無条件にその行列の正則性を証明することに成功した。また、本研究で構成した、GMSモデル、LWモデルに対する構造保存スキームによる数値計算を通じ、それぞれのモデルが持つ保存則の違いに起因する、興味深い数値解の挙動の違いに関する数値的結果が副産物的な結果として得られた。なお、本研究の主題である、凸多角形格子上での構造保存スキームの構成に関しては、まず一手目として、動的境界条件ではなく、Neumann境界条件下の問題にはなるが、空間領域を円領域とした場合で、その構造保存スキームを構成および実装し、降籏ら(2011)の結果の再現実験を行うことができている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

凸多角形格子上でのCahn-Hilliardモデルに対する構造保存スキームの構成およびその実装は、まだ非力学的境界条件のNeumann境界条件下でしかできていない。特に境界での拡散の役割を果たす、ラプラス-ベルトラミ作用素の項が登場しない、単純な動的境界条件下のモデルに対しては、Neumann境界条件下のスキーム構成法がほぼ直接応用可能であるが、本研究で主に対象とする力学的境界条件下のCahn-Hilliardモデルでは、その境界条件にラプラス-ベルトラミ作用素の項が現れるため、その離散化をどのように与えるかが課題となる。一方で、直交格子の場合にはなってしまうものの、可解性などの理論解析の結果は集まりつつある。
以上を鑑みると、全体としては「遅れている」という評価が妥当であるとみている。

今後の研究の推進方策

凸多角形格子上での力学的境界条件下のCahn-Hilliardモデルに対する構造保存スキームの構成およびその実装が最重要課題であることから、まずはこれに取り組む。特に、離散化する前の元の連続モデルのラプラス-ベルトラミ作用素の定義に立ち戻り、その離散化の糸口を掴む。それに加えて、国内学会や国際会議等に参加し、他の研究者との議論の機会を増やしつつ、Zoom等によるWebinar会議も積極的に利用して国内外の有力な研究者との交流を増やし、課題解決の方策を探る。また、本研究で対象とする問題は空間多次元の問題であることから、数値計算を行う場合にはこれまでの構成法に基づく構造保存スキームでは計算時間がかかる恐れがある。そこで、今回の問題に対しても、時間ステップを余剰に導入し、スキームの非線形性を弱める線形多段階化と呼ばれる手法を用いることで、線形陰的な離散変分導関数法スキームも構成し、計算コストの削減に取り組む。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Structure-preserving schemes for Cahn-Hilliard equations with dynamic boundary conditions2024

    • 著者名/発表者名
      Okumura Makoto and Fukao Takeshi
    • 雑誌名

      Discrete and Continuous Dynamical Systems - S

      巻: 17 号: 1 ページ: 362-394

    • DOI

      10.3934/dcdss.2023207

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 動的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対する多段線形化構造保存スキーム2024

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 雑誌名

      甲南大学紀要. 知能情報学編

      巻: 16 ページ: 17-34

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 動的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対する構造保存スキームの可解性とある行列の正則性について2024

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 学会等名
      日本応用数理学会第20回研究部会連合発表会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 動的境界条件下のある構造保存スキームの可解性の証明に現れる行列の正則性について2024

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 学会等名
      日本数学会2024年度年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] A structure-preserving scheme for the Cahn-Hilliard equation with dynamical boundary conditions based on the discrete variational derivative method2023

    • 著者名/発表者名
      Makoto Okumura
    • 学会等名
      The 13th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations And Applications
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] A structure-preserving scheme for the Liu-Wu model2023

    • 著者名/発表者名
      Makoto Okumura
    • 学会等名
      The 10th International Congress on Industrial and Applied Mathematics
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 空間2次元の動的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対する構造保存数値解法について2023

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美, 深尾 武史
    • 学会等名
      日本数学会2023年度秋季総合分科会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 空間2次元における動的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対する構造保存スキームについて2023

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 学会等名
      数値解析セミナー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Structure-preserving schemes for the Cahn-Hilliard models under dynamic boundary conditions with characteristic conservation laws2023

    • 著者名/発表者名
      Makoto Okumura
    • 学会等名
      Multidisciplinary research on nonlinear phenomena: modeling, analysis and applications
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 空間2次元のGMSモデルに対する構造保存スキームとその可解性2023

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 学会等名
      第2回若手応用数学研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 空間2次元のGMSモデルに対する構造保存スキームの可解性とある行列の正則性について2023

    • 著者名/発表者名
      奥村 真善美
    • 学会等名
      第49回発展方程式研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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