研究課題/領域番号 |
23K13026
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
久野 義人 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (30753628)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 量子回路 / 量子エンタングルメント / 人工量子多体系 / スタビライザー形式 / 非平衡ダイナミクス / 量子コード / 格子ゲージ理論 / 観測誘起型相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では測定や環境との相互作用を含んだハイブリット型量子回路モデルや冷却原子系などの人工量子多体系をターゲットとし量子情報の非平衡ダイナミクスの諸性質およびその普遍性を明らかにし、観測誘起型エンタングルメント相転移についても理論的アプローチにより解明する. 特に初期状態にエンコードした量子多体系内部の量子情報が特異な多体ハミルトニアンから構成されるユニタリ時間発展と量子測定のような量子操作の競合によってどのように量子相転移を伴いながら量子情報がスクランブリング(空間的な伝搬)するのかを系統的に探究し、新たな観点からの普遍的分類につながるような大局的な性質を明らかにすることを目標とする.
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研究実績の概要 |
(I)クリフォード型量子回路模型における非平衡ダイナミクスの研究の為、スタビライザー形式を用いた数値計算手法を開発した。この数値計算手法を用いることにより人工量子多体系として多キュービット系の非平衡ダイナミクスを数値的に研究した。特に複雑なパウリストリング演算子についての測定誘起型非平衡ダイナミクスの数値計算を行い、特定のパウリストリング演算子の非可換性に由来する体積則的なエンタングルメントエントロピーを示す測定誘起型量子相の存在を明らかにした。さらに、この回路模型における量子エンタングルメントの伝播則についても詳細な数値計算を行い、量子スクランブリング的な伝搬則が量子測定の連続的な作用によって起きることを明らかにした。これらの成果を査読付き論文としてまとめ出版した。
(II)格子ゲージ理論模型に由来するトリックコード型模型におけるスペクトルの縮退構造に由来する部分系量子コードの研究を推進した。境界のある格子ゲージヒッグス模型について特定のゲージ固定を行いトリックコード型人工量子多体系模型を考えると、この系のスペクトル構造は基底状態から励起状態までにわたり境界の構造に依存した縮退構造が現れ、それが量子ビット的なものなることを理論的に議論した。特にそのような量子ビットとして扱える縮退状態における具体的な波動関数の構造を数理的に明らかにした。これらの波動関数は系の境界に作用する論理演算子によって量子コードとして取り扱うことができることを示した。さらにこれらの縮退状態および波動関数の構造の起源については格子ゲージ理論との密接な関係があることを理論的に整備した。これらの進展を査読付き論文としてまとめ出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クリフォード型量子回路模型におけるスタビライザー形式を用いた数値解析において、必要な数値計算アルゴリズムの理解と効率的なコード作成について共同研究者との議論を多く行うことで開発速度が促進された。対象としている人工量子多体系量子回路モデルの数値計算を早い段階で行い、様々な回路設定のもと計算試行を行うことができた。これによって当初計画していた計算コード開発に関しての期間が短縮され、かつ信頼性の確証が取れたため本研究テーマについての進展および新奇性のある結果を得ることができた。
また、人工量子多体系における量子メモリ的な量子多体系状態の研究テーマについても、模型の設定および解析的な試行が共同研究者との議論によりどのような計算をすべきか、どのような状態を解析的に書き下せるか等、問題設定の照準がスムーズに進んだことにより順調に進展した。さらに解析的な作業に時間を取られなかったために数値計算による確認にも時間を割くことができ部分系コードのスペクトル構造の物理的な理解が早い段階で進めることができた。これにともない、早い段階で得られた結果を査読付き論文として出版することが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は量子回路模型において生成可能な格子ゲージ理論的多体量子状態である閉じ込め相、ヒッグス相、およびトポロジカル秩序相がどのように測定誘起型相転移を経て多キュービット系の量子状態として現れるかをスタビライザー形式による効率的な数値計算手法を駆使して研究を進める。特に量子メモリ等に応用可能な多体状態相であるトポロジカル秩序相において、量子測定のもとでトポロジカルエンタングルメントエントロピーがどのように変化し、非平衡ダイナミクス下における相転移的なものが起きるかどうかを検証する。
また、多キュービット人工量子多体系における局所測定回路による有限回量子操作による長距離秩序相の生成原理について研究を始める予定である。拡張的なクラスター量子多体状態(これは多くの対称性によって保護された対称性に守られたトポロジカル相である)から部分系における局所測定型回路を用いて階層構造的に多体量子状態がどのように変化していくのかを明らかにする。特に、スタビライザー形式を用いた解析的な計算を行い拡張的なクラスター状態の対称性に守られたトポロジカル相がどのように変化していくかを試行し、一般的な状態変化の流れを把握することを目標とする。さらに解析的に予想した一般的な状態変化の流れをスタビライザー形式の数値計算手法をもちいて検証し、ストリング演算子の期待値や長距離相関を数値的に観察することにより、連鎖的な部分系における局所測定が長距離秩序を構成する振る舞いを明らかにする。
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