研究課題/領域番号 |
23K13031
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
池田 晴國 学習院大学, 理学部, 助教 (30911763)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 非平衡相転移 / ジャミング転移 / アクティブマター / 統計物理 / 非平衡 / 相転移 / 粉体 |
研究開始時の研究の概要 |
砂粒や、穀物、ビー玉等の、熱ゆらぎを無視できる程大きなマクロな粒子の集まりを、粉体と呼ぶ。密度の小さな粉体は流体的に振る舞うが、圧縮していくと、ある密度で突然固体のように振る舞い始める。これがジャミング転移と呼ばれる現象である。ジャミング転移は、非平衡系における相転移の代表例として、統計物理学の観点からも注目を集めている。ジャミング転移の静的な臨界指数については、平均場理論を用いて、ほぼ厳密に計算されている。一方で、ジャミング転移点近傍に置ける動力学については、未だ満足な理論が存在しない。本研究では、摩擦が無い球形粒子からなる系の、ジャミング転移点近傍における動力学を記述する理論を構築する。
|
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、ジャミング転移点近傍の粉体における動的臨界指数を理論的に導出することである。ジャミング転移点近傍の粉体は、非平衡性とフラストレーションが共存する究極の強相関系であり、その解析は容易ではない。理論構築のヒントを得るために、本年度は、先ずフラストレーションが無い非平衡系における相転移の研究を行った。特に、Vicsek模型について一定の成果を挙げることができた。以下で詳細を説明する。 1995年にVicsek等は、鳥や魚の群れを記述するために、動き回るスピン模型を導入した(Vicsek模型)。Vicsek模型は、生物集団を統計力学の手法を用いて解析しようという最初期の研究であり、現在もなおアクティブマターの分野で活発に研究されている。またこの模型は、平衡系ではマーミン・ワグナーの定理によって禁止されている、二次元系でも連続対称性の破れを示す等、平衡系では見られないような様々な非自明な振る舞いを示し、統計物理学の分野でも注目を集めている。1995年にVicsek等の論文が出版された直後、TonerとTuは、Vicsek模型の非自明な振る舞いを説明するための連続場の理論を構築した(Toner-Tu理論)。しかしながら、最近の大規模数値シミュレーションによって、Toner-Tu理論が予言するスケーリング則は、実際のVicsek模型のシミュレーションとは整合しないことが明らかになった。 本研究では、理論とシミュレーションの不整合を解消するために、Toner-Tu理論では見落とされていた非線形項を含む、現象論的な模型を構築し、その解析を行うことで、新しいスケーリング理論を構築した。計算された、スケーリング指数は、数値シミュレーションの結果と見事に一致することが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Vicsek模型を記述する現象論的な模型を構築し、スケーリング理論を構築することに成功した。この指数の正確な値を求めることは、Vicsek模型が提案されてから、約30年間にわたり達成され得なかった難問であり、当該分野に与えるインパクトは大きい。したがって、本研究課題は、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
Vicsek模型のスケーリング指数を決める上では、密度ゆらぎが重要な役割を果たす。一方で、十分密度が高い系では、密度ゆらぎが無視できて、系は実効的に、非圧縮流体として振る舞うことが予想される。この圧縮・非圧縮性がスケーリング指数にどのような影響を与えるのかを調べる。 また、Vicsek模型の解析で培った、非平衡系におけるスケーリング理論を、粉体系のジャミング転移に適用することを試みる。
|