研究課題/領域番号 |
23K13033
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
奥川 亮 東京理科大学, 先進工学部物理工学科, 助教 (40828844)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 非エルミート系 / トポロジカル物性 / 結晶対称性 / トポロジカル超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶の対称性はトポロジカル相に強く影響を与え、結晶対称性に由来した様々なトポロジカル相が見出されてきた。一方で、エルミート性を破ることで、これまでとは異なるトポロジカル物性である非エルミート表皮効果や例外点の研究も進められている。また、非エルミート性によって従来にない対称性が許されることが知られる。本研究では、非エルミート系特有のトポロジカル物性と結晶対称性の関係を明らかにする。特に、新しい結晶対称性と非エルミートトポロジーを融合することで、新奇なトポロジカル物性を開拓する。
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研究実績の概要 |
本年度は、まずノンシンモルフィックな結晶対称性(らせん対称性など)に強制される非エルミート表皮効果の研究を行った。従来のエルミート系では、ノンシンモルフィックな対称性はバンド構造に強く制約を与え、トポロジカルなバンド構造とも深く関連することが知られる。したがって、非エルミート系においてもバンド構造がノンシンモルフィックな対称性によって影響を受けることが期待される。本成果では、ノンシンモルフィックな対称性によって、バンドトポロジーに由来して非エルミート表皮効果が必ず実現される条件を見出した。特に、非エルミート系特有の点ギャップトポロジーと対称性の関係を具体的に調べることで、どのように表皮モードが局在するかを明らかにした。特に、2次元非エルミート系においては、その実現条件を時間反転対称性がある場合も含めて体系的に示すことができた。加えて、3次元系においてもノンシンモルフィックな対称性に強制される表皮効果が出現する場合があることを示した。同時に、このタイプの表皮効果が起きるときには、必ず点ギャップが特定の点で閉じることを明らかにした。 また、準結晶におけるワイル超伝導体の研究も行った。準結晶は通常の結晶と異なり、任意の方向に並進対称性を有しない。ワイル超伝導体は、3次元波数空間にてギャップレス点を持つ、結晶におけるトポロジカル相の1つである。その一方で、本研究では結晶とは異なる準結晶においてもワイル超伝導が拡張できることを明らかにした。さらに、そのバンドトポロジーに由来して表面ゼロモードが出現することも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に合ったとおり、結晶対称性であるノンシンモルフィックな対称性に由来する非エルミート表皮効果の理論を構築できた。本成果は、結晶対称性を通じて高次元系の非エルミートバンドトポロジーを理解するという点で、本研究の目的に適った成果である。さらに、こうした研究結果は国際誌に掲載されており、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通り、高次元系における結晶対称性に保護された非エルミート物性の探索を行う。また、表皮効果に加えて、別の非エルミートトポロジカル物性である例外点に関しても結晶対称性との関係を明らかにしていきたい。さらに、今年度行った準結晶の研究の知見を活かして、準周期性とトポロジカル物性の間の関係も深く追求する予定である。このような観点から、新しい非エルミート物性を提案していく予定である。
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