研究課題/領域番号 |
23K13041
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 亮 東京大学, 物性研究所, 助教 (20974885)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 光電子分光 / 励起子 / トポロジカル物質 / 角度分解光電子分光 / 時間分解光電子分光 / 非平衡 / トポロジカル物性 / エキシトン / 表面物性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、次世代の電子・情報技術の根幹を担うことが期待されるエキシトニックトポロジカル状態の発展的研究を目的とする。近年発見された、光とトポロジカル状態の相互作用 によって生み出される新しい準粒子であるエキシトニックトポロジカル状態のエネルギー状 態ならびにスピン分極を、角度分解光電子分光にスピン・時間分解能を追加した最先端装置によって直接的に観測し、超高速レーザーを用いた光制御可能性、そして基本的な特性およびそのメカニズムを解明する。また基礎的な理解を通じて、スピントロニクスなどへの応用提案を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、近年新しく発見された、トポロジカル物質内の光励起によって発現するエキシトニックな状態(エキシトニックトポロジカル状態 )について、基礎的な性質を調べることである。励起子(エキシトン)とは、光で励起された電子と正孔のペアのつくる準粒子の一つであり、励起光の特性や物質の次元性などの発生環境条件を変化させることで、密度や相互作用をチューニングが可能であるとされている。これによって、様々な量子相や量子相転移などの発現・制御が可能であることが示唆されている。 本年度は、エキシトンの生成条件の中でも、その特性を支配する重要なパラメータである、温度と励起光の強度を変化させ、エキシトニックトポロジカル状態の振る舞いの温度依存性と光強度依存性を明らかにすることにフォーカスをあてた研究を進めた。実験手法としては主に角度分解光電子分光(ARPES)を用い、トポロジカル絶縁体内に光励起によって生じるエキシトニックトポロジカル状態の電子の状態を、エネルギーと運動量の分散関係を直接観測し、測定温度と励起光強度という二つのパラメータを振ることで挙動の変化を直接的に捉える。得られた結果を解析し、エキシトニックトポロジカル状態における、電子と正孔ペアの量子相の連続的な転移を捉えることに成功した。この結果は、ある一定の励起光強度(エキシトン密度)と一定の温度の範囲においてエキシトニックな凝縮状態の実現の可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であったエキシトニックトポロジカル状態の基本的性質の理解という面において、新たな実験データの解析と議論が進んだことによって、新しい知見が得られた。探索にあたって未踏な領域や未解決な問題は数多く残るものの、エキシトニックトポロジカル状態という新しく発見された状態についての理解は着実に進んでいる。さらに、今後の展開へ影響を及ぼす可能性が高い示唆的なデータも存在しており、理論モデルや計算シミュレーションと組み合わせることで、新たな展望が拓ける可能性も示している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって、エキシトニックトポロジカル状態の基本的性質を、測定器の条件(励起光強度・測定温度)を変えることで研究を進めた。次年度は他の制御パラメータ、特に試料物質側の条件(ドーピングレベルや次元性)を変化させることにフォーカスをあてていく。特に生成時間や寿命などのダイナミクスへの変化という点に注目して、各パラメータの与える影響を明らかにする。
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