研究課題/領域番号 |
23K13049
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山本 隆太 国立研究開発法人理化学研究所, 量子コンピュータ研究センター, 研究員 (40803763)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 冷却原子 / ラマンサイドバンド冷却 / 三角光格子 / 量子シミュレーション / 量子気体顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
幾何学的フラストレートスピン系で発現する量子スピン液体などの新奇な量子状態の解明は学術面および応用面の両面で重要な課題である。我々は光の干渉効果を利用した人工格子(光格子)に閉じ込められた極低温原子を用いて理想的な幾何学フラストレートスピン系の実装することで新奇な量子状態を実現し、その解明を目指している。本研究では、ポテンシャル形状の局所操作によってエントロピーを再分配し、局所的に相転移温度以下への冷却および新奇な量子状態の実現を目的としている。また、幾何学的フラストレートスピン系における膨大な量子相関情報を現実的な実験時間内で取得するため、データ取得時間の超高速化を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では幾何学的フラストレートスピン系で発現する新奇な量子状態の解明に必要な膨大な量子相関情報を効率的かつ超高速にデータ取得可能な実験系の実現を目的としている。 本年度は本研究の要であるラマンサイドバンド冷却による原子の極低温への冷却の高速化に取り組んだ。しかしながら、現状ではラマンサイドバンド冷却による十分な冷却効果が得られておらず、シーケンスの高速化に成功していない。この原因としてトラップ光の強度ノイズや光ファイバーに対する温度変化や振動による位相ノイズ(ファイバーノイズ)による原子への加熱などが考えられる。このうちトラップ光の強度ノイズおよびファイバーノイズに関しては強度安定化時の強度ノイズレベルの確認およびファイバーノイズキャンセレーションによる位相ノイズの除去を行った。この結果から強度ノイズおよび位相ノイズによる加熱は問題ないことがわかった。今後はラマンサイドバンド冷却に関連するパラメータおよびシーケンスのさらなる最適化を行う予定である。 データ取得を効率化するうえでデータ取得時間の超高速化はもちろん、システムの安定性向上も重要である。現在のシステムの不安定性の主な原因に光トラップ(FORT)のビームポインティングの安定性があり、この改善のためにファイバー化を行った。これにより、月に1度は必要だった調整がほぼ必要ないほどに安定化することに成功した。また、87Rb原子の量子縮退に使用している磁場勾配用コイルから発生する熱でもシステムが不安定となることがわかっている。本年度ではコイルの水冷システムを構築した。これによって、これまで5-10℃程度あった温度上昇を1-2℃程度に抑えることに成功した。本研究の最終目標である幾何学的フラストレートスピン系の実装には85Rb原子のフェッシュバッハ共鳴が必須であり、この水冷はフェッシュバッハ磁場の使用においても重要な進展である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、ラマンサイドバンド冷却を活用し、短時間で量子縮退領域まで冷却することを目指していた。しかしながら、想定外の加熱要素があり本年度の試みでは十分な冷却効果が得られず、研究の進捗がやや遅れている。十分な冷却効果が得られなかったことについては研究概要で述べたように冷却効果を妨げる要素を考察し、原因を排除した。また、当初の計画にはなかったが、データ取得の安定性向上を目的にFORTのファイバー化や水冷システムの導入を行った。FORTファイバー化によって月に1度は必要だったFORTの調整は不要となり安定した実験を行えるようになった。また水冷システムによって最終目標である幾何学的フラストレートスピン系の実装に必要な85Rb原子のフェッシュバッハ共鳴が安全かつ安定に使用可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
ラマンサイドバンド冷却に関連するパラメータおよびシーケンスの最適化を行うことで、極めて短時間で量子気体まで冷却することを計画している。また、磁気光学トラップ領域から単一原子観測を行う領域間の高速な原子輸送などの実験シーケンスの高速化にも取り組む予定である。 一方で、最終目標である幾何学的フラストレートスピン系の実現を目指して局所的なエントロピー操作に必要な任意形状ポテンシャルの構築および85Rb原子を用いた反強磁性スピン系の実装にも取り組んでいくことを考えている。
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