研究課題/領域番号 |
23K13052
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野 淳 東北大学, 理学研究科, 助教 (40845848)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 光電場駆動 / 実時間ダイナミクス / アト秒パルス / 量子スピン液体 / キタエフ模型 / 超高速現象 / フロケ理論 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,テラヘルツパルス光源技術の著しい発展を背景として,高強度の光電場によって固体中の電子を駆動することが可能になり,従来の光共鳴励起現象とは質的に異なるコヒーレントな電子系の超高速現象が観測されるようになりつつある。本研究課題では,そのような光電場で駆動される非平衡ダイナミクスに焦点を当て,多電子系の非平衡状態の解明と,それによる物性の高速制御に向けた基礎理論の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
主に光電場や磁場によって駆動される量子系の実時間ダイナミクスに注目して解析を行い,以下の成果が得られた。 (1)固体からのアト秒パルス発生の理論構築。質量のあるディラック粒子のトンネル励起確率に関して古くから知られていた理論を固体結晶に拡張し,高強度の光電場によってトンネル励起された電子正孔対の波動関数を精度良く記述する波動関数を導くことができた。また,これを用いて,電子正孔対の波動関数を光電場によって精密に制御するために不可欠となる,光電場波形の最適化手法を考案した。特筆すべき応用として,励起された電子正孔対が再衝突する際に電子・正孔の波束の広がりが最小となるように光電場波形を最適化することで,フーリエ限界に迫るアト秒パルス発生が可能であることを示した。そこでは,固体結晶中のブロッホ電子の質量が光電場駆動によって符号まで変化することが本質的な役割を果たしており,従来の原子ガス系における高次高調波発生を用いた極短パルス発生とは全く異なる機構が働いていることが明らかになった。 (2)量子スピン液体における分数化準粒子の制御。基底状態が量子スピン液体となることが知られているキタエフ模型では,スピンの自由度がマヨラナフェルミオンとバイゾンの二つの準粒子に分数化する。特に,マヨラナゼロモードを伴ったバイゾンは非可換エニオンとして振る舞うことから量子計算への応用が期待され,その制御法の確立が求められている。そこで平均場近似を用いてキタエフ模型における実時間ダイナミクスの解析を行い,空間的に局所的な磁場の印加・掃引によってバイゾンの位置を制御できることを見出した。 以上の成果はPhysical Review B誌にいずれもLetterとして掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体中の電子正孔対のトンネル励起に関する新たな知見と,それを応用した光電場駆動によるアト秒パルス発生法を提案することができた。また,光電場に限らず磁場によって磁性体の分数化準粒子を制御できることが明らかになり,より広い観点から新たな方向性が見出された。以上から,研究計画に照らして概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を元に,磁性体,特にスピテクスチャと結合した電子系における高次高調波発生や高次サイドバンド発生などの光電場駆動現象について研究を展開する。また,光駆動された電子が磁気構造に与える反作用も非自明であり,今後考察を深めていく。
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