研究課題/領域番号 |
23K13054
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野本 哲也 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (00908650)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 有機導体 / ディラック電子 / トポロジカル絶縁体 / 強相関性 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル絶縁体は表面のみ伝導性を持つ特殊な絶縁体であり、量子コンピュータやスピントロニクスデバイスの材料として期待されている。特に有機物から構成される有機トポロジカル絶縁体は、安価でフレキシブルなトポロジカル材料として有望視されている。本研究では有機トポロジカル絶縁体の新奇発見と強相関性に由来する特異な物性・機能の開拓を目標に研究を実施する。化学置換や磁場・圧力などの外部パラメータによってトポロジカル物性がどのように変化するのかを系統的に調査することで、有機トポロジカル絶縁体を実現するために必要な条件解明を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、有機トポロジカル絶縁体候補物質の物性測定のための装置セットアップと候補物質の合成および基本的物性の測定を実施した。前者に関しては、近年トポロジカル物質において予言されている物理現象のうち、多体効果による空間反転対称性の破れに敏感な"熱電Hall効果"と呼ばれる輸送現象について、その測定装置の開発と検証を行った。いくつかの試作機の作成を経て、室温環境下で±5K程度の温度差を試料に形成できるシステムを構築することに成功した。また、本装置を用いて比較的測定が簡易な単結晶Te結晶に対する測定を実施した。その結果、温度勾配と印加電圧のそれぞれに比例する横電圧(Hall電圧)の観測に成功した。また、第一原理計算による推定値と比較した結果、理論値と比較的良い一致を示すことが分かった。このことは熱電ホール効果が現実の物質で観測可能なことを示唆する重要な結果である。今後、有機トポロジカル物質への展開を目指し、装置の小型化や低温でも測定可能なように装置改良を進める予定である。後者に関しては、北海道大学のグループの協力も得ながら、候補物質の一種であるα-(BETS)2I3およびα-(BEST)2I3の結晶を得ることに成功した。これらの試料に対して電気抵抗測定を行い、先行研究の結果を再現することを確認した。今後表面伝導の有無やカイラルアノマリー等のトポロジカル物性が観測されるか否かを検証し、その電子状態の解明に繋げたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属の変更があったため研究活動の一次中断があったものの、当初の目標であった試料合成とについては問題なく進行している。測定系の開発に関しては理論家と協力しつつ慎重に進めているために有機物質の測定にまで到達できていないが、無機物質によるテスト実験は順調に進んでいるため、次年度以降速やかに検証に移れると期待する。研究の主目標である有機トポロジカル物質系の次元性に関して、α-(BETS)2I3の強磁場下の磁気抵抗測定から三次元的な電子構造を示唆する挙動を観測することに成功したことは重要な成果であると考えられる。同様の物性が類縁体でも観測できるかどうかは有機系のトポロジカル物性を議論するうえで重要な問題であり、次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ研究計画に変更予定はない。有機トポロジカル物質の基本物性の測定は現在合成が完了しているものから随時行い、磁気抵抗などの精密な議論も追って行う。無機物質の測定で得られた知見から熱電ホール効果測定装置の改良を施し、有機物質の測定へと応用することで候補物質がトポロジカル相か否かをより深く検証する予定である。
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