研究課題/領域番号 |
23K13056
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角田 峻太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60881638)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | FFLO超伝導 / 異方的スピン分裂 / 磁気八極子秩序 / 交替磁性 / 非共型空間群 / スピンレス擬スピン / 超伝導 / 強相関 / 多自由度 / 磁気秩序 / 応答現象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、第一原理計算を出発点としたbottom-up的手法と、シンプルな模型計算や対称性に基づくtop-down的手法を組み合わせ、強相関・多自由度系で発現する新奇超伝導相の解明およびそれに由来する特徴的な応答現象の提案を行う。 特に、近年実験的にも著しい発展が見られるリエントラント超伝導相や、強磁性/反強磁性とは異なる磁気秩序と競合・共存する超伝導相を研究対象とし、これらを微視的な観点から理解する。
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研究実績の概要 |
本課題では、強相関系・多自由度系で発現する新奇超伝導現象を微視的な理論解析に基づいて開拓することを目的とし、(A)不整合磁気秩序の揺らぎに媒介される異方的超伝導状態の研究 および (B)多極子秩序と共存するエキゾチック超伝導状態と応答の研究 という2つのテーマを遂行することを目指している。本年度は当初の計画から順番を変更し、(B)のテーマに重点を置いて研究に取り組んだ。具体的には、(化学)圧力に応じて磁気秩序相や超伝導相を生じるκ系有機導体に注目し、これら2つの相が共存した場合にクーパー対が有限の重心運動量をもつFFLO超伝導状態が安定化しうることを、ミクロな模型の多体計算に基づいて明らかにした。この物質群の磁気秩序は一見通常のコリニア反強磁性であるが、実際にはエネルギーバンド構造に異方的なスピン分裂を伴うq = 0の磁気八極子に分類され、このスピン分裂は複数の分子(副格子)の特徴的な配列によって生じる。最近では交替磁性(altermagnet)という名で呼ばれる磁気秩序であり、国際的にも注目されている。本成果はPhysical Review Research誌で論文を出版した。 (A)のテーマについては、候補物質の一つとして考えているCrAsの強束縛有効模型を作成した。また関連して、CrAsの空間群であるPnmaを含む5つの非共型空間群について、Zeeman磁場下でもスピン分裂が起こらない「スピンレス擬スピン」で構成されたBloch状態がブリルアンゾーン境界で現れることを明らかにした。CrAsはこのブリルアンゾーン境界付近にもフェルミ面をもつため、このスピンレス擬スピンの異常な性質が超伝導相にも非自明な影響を与えることを期待し、現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子(副格子)とスピンの自由度が絡み合うκ系有機導体を舞台とし、そこで発現する磁気八極子秩序と共存するエキゾチックなFFLO超伝導状態を提案することができた。これは「多自由度系で発現する新奇超伝導現象を微視的な理論解析に基づいて開拓する」という本課題の目標に向けた重要な成果であり、研究は順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度ではテーマ(B)に関して、スピン軌道相互作用が小さいκ系有機導体におけるFFLO超伝導を提案することができたので、来年度はスピン軌道相互作用がより大きいRuO2やCeRh2As2といった物質も念頭に置いた研究を行い、多極子秩序と共存する超伝導についてのさらなる理解を促進していく。特に、多自由度性や強相関効果がどのように物性に影響を与えるかに注視して研究を行っていく。 テーマ(A)に関しては、本年度に構築したCrAsの微視的有効模型の多体計算を行い、磁気揺らぎによって発現しうる超伝導相を解析する。また、この微視的模型に基づいてGL理論を導出し、磁気秩序と超伝導の協奏効果を調べることも考えている。さらに、近年精力的に研究が行われているUTe2にも着目し、この物質で発現すると考えられている非整合磁気揺らぎと超伝導の関係について、微視的模型に基づく研究を行っていく。特に、b軸方向の強磁場中で発現するメタ磁性とリエントラント超伝導相に注視して考察することを考えている。
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