研究課題/領域番号 |
23K13060
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
末次 祥大 京都大学, 理学研究科, 助教 (00893710)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | スピン三重項超伝導 / トポロジー / 多重超伝導 / 重い電子系 |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導とトポロジーが結びついたトポロジカル超伝導は、試料のエッジや渦糸の中心にマヨラナ粒子などの新奇な準粒子が創発する。本研究ではトポロジカル超伝導実現の有望な舞台であるUTe2における熱伝導度を精密に測定することで、UTe2で創発するエキゾチック超伝導のトポロジーの解明を行い、トポロジカル準粒子探索の段階へと研究を進展させる。
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研究実績の概要 |
超伝導とトポロジーが結びついたトポロジカル超伝導は、試料のエッジや渦糸の中心にマヨラナ粒子などの新奇な準粒子が創発するため注目を集めている。このようなトポロジカル超伝導実現の舞台としてはスピン三重項超伝導体が有望である。本研究ではスピン三重項超伝導の実現が有力視されている重い電子系超伝導体UTe2における熱伝導を精密測定を行った。その結果、UTe2が完全なギャップを持つスピン三重項超伝導体であることを明らかにした。UTe2の超伝導対称性は、これまでa軸方向にポイントノードを持つB3u対称性が有力視されてきたが、本研究により得られた熱伝導度の磁場依存性のデータから、a軸方向にノードは存在せず、あらゆる方向にギャップが開いたAu対称性であることが明らかとなった。これは超流動ヘリウム3のB相に類似したスピン三重項超伝導の初の実例である。トポロジーの観点から考察すると、Au対称性の実現は、UTe2があらゆる結晶面にマヨラナ表面状態が現れる3次元トポロジカル超伝導体であることを示唆している。以上の研究結果は国際的な学術誌Science Advancesに原著論文として出版されている[S. Suetsugu et al., Science Advances 10, eadk3772 (2024).]。 本研究の成果は、UTe2における超伝導対称性の特定に留まらず、これまで主に物質探索が行われてきたトポロジカル超伝導研究を、物質中のトポロジカル準粒子の直接探索へと展開させる重要な一歩である。本研究で見出された3次元トポロジカル超伝導の舞台となるUTe2は、今後のマヨラナ準粒子の研究に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、UTe2の超伝導対称性とトポロジーの解明を目指していたが、本年度中に超伝導ギャップ対称性の特定に関して大きな進展があった。この成果は、トポロジカル超伝導研究を物質探索からトポロジカル準粒子の直接観測へと展開する上で重要な知見である。さらに特筆すべきは、得られた成果が国際的な学術雑誌Science Advancesに原著論文として出版されたことである[S. Suetsugu et al., Science Advances 10, eadk3772 (2024).]。この論文では、UTe2がスピン三重項のフルギャップ超伝導体であり、3次元トポロジカル超伝導体の有力な候補であることを報告した。UTe2が新奇トポロジカル超伝導体の舞台となることが明らかになったことで、今後のマヨラナ準粒子研究に大きな弾みがつくものと期待される。 今年度に論文の出版がされたことからも分かる通り本研究は当初の目的を上回る成果が得られており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、UTe2における3次元トポロジカル超伝導相の存在が明らかになったことで、今後のマヨラナ準粒子研究の新たな舞台が開かれた。次の段階として、UTe2のb軸方向の磁場下で期待されているリエントラント超伝導相に着目し、多重超伝導の観点からトポロジカル超伝導の研究を推進する。 UTe2がリエントラント超伝導を示すb軸方向の磁場下においては二つの異なる超伝導相が入れ子になった多重超伝導相の存在が期待されている。最近の比熱測定において超伝導相内での相転移の存在が指摘されているが、多重超伝導相が実現している場合に熱力学的に期待される相転移が観測されていない。この原因として、先行研究では質の低い試料を用いていること、比熱にはボルテックスなどに由来する局在した寄与が現れるため準粒子の状態密度に敏感ではないなどが考えられる。本研究では超純良単結晶において遍歴的な励起にのみ敏感な熱伝導測定を行うことで、多重超伝導相の検証を行う。
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