研究課題/領域番号 |
23K13066
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新城 一矢 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40963046)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 新奇非平衡量子相 / 超高速光学応答 / 二次高調波発生 / 光学伝導度 / 量子液晶 / ループカレント / 強相関電子系 / 非平衡量子多体現象 |
研究開始時の研究の概要 |
サブサイクルパルス(電場が包絡線内で一周期以下の振動をするパルス)が最新のレーザーで生成されるようになり,それがどのような新しい現象を生み出すのか,大きな注目が集まっている.本研究では,サブサイクルパルスを強相関電子系に照射して生み出される新奇量子多体現象の理論的な解明を目指す.強相関効果を非摂動的に取り扱える時間依存密度行列繰り込み群法という数値計算手法を駆使して,「サブサイクルパルス・エンジニアリング」と呼べる強相関電子系の局在性・対称性の制御法の提案,新しい研究分野の創出をする.
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研究実績の概要 |
本研究では,サブサイクルパルスで励起した強相関電子系の性質を,非摂動的な数値計算手法で解明することを目指す.そのために,一次元系や二次元系で有効な手法である,時間依存密度行列繰り込み群法を用いて電流を計算し,光学伝導度などの電子状態の性質を調べる. 研究実施計画に沿って,まずサブサイクルパルスで励起した一次元拡張ハバード模型に流れる電流の時間発展を計算した.その結果,キャリアエンベロープ位相とキャリア密度を制御することで,金属および超伝導状態に空間反転対称性を破る電流を誘起できることがわかった.この振る舞いはモット絶縁体状態では見られない.これは,Drude重みおよび超流動重みの存在下では,サブサイクルパルスによって導入されるAharonov-Bohm fluxが多体波動関数の位相を瞬間的にひねることで電流を誘起するためだと理解できる.このようにサブサイクルパルスで誘起した電流は空間反転対称性を破ることが期待されるが,二次高調波の有無を調べることで,実際に検出可能であることを明らかにし,論文にまとめた. 続いて,二次元系におけるサブサイクルパルス・エンジニアリングの可能性を探るために,キャリアドープした二次元ハバード模型の計算を進めた.その際に,基底状態であっても,微小なfluxの導入に対してカレントが大きく応答する状態が存在することを発見したため,さらに系統的に研究を進めた.その結果,励起子絶縁体,軌道選択型モット絶縁体,二次元モット絶縁体にキャリアを導入した場合,ある条件下ではループスピン流が発現することを明らかにし,論文にまとめた. 二次元系でのサブサイクルパルス・エンジニアリングの出発点として,単一サイクルパルスで励起した二本脚梯子系の絶縁破壊の様子も調べることができた.過渡吸収スペクトルに一次元系には見られない構造が現れることを明らかにし,論文にまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに,一次元系および二本脚梯子系におけるサブサイクルパルス・エンジニアリングの研究を進め,論文を出版することができたため. また,二次元モット絶縁体の非平衡状態の計算をする以前に必要になる,基底状態でのカレントの振る舞いも理解を進めることができ,論文を出版することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに行った研究成果を活かして,二次元系での非平衡量子状態の研究をさらに進める.
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