研究課題/領域番号 |
23K13082
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
河内 裕一 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (40966024)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | プラズマ乱流 / 部分磁化プラズマ / 非線形過程 / ミクロスケール乱流 / マルチスケール相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、実験・計測器開発・データ解析のサイクルによって部分磁化プラズマの乱流素過程の解明を推進する、4年計画である。1年目は、部分磁化プラズマにおける乱流のパラメータスキャンを行い、実験条件をサーベイする。また、3次元ベクトル場計測のためのキューブプローブ開発やそのための回路設計に取り掛かる。2年目ではキューブプローブの完成させ、乱流輸送の観測実験を行う。 3年目では、減速電位アナライザの開発に取り組む。またソフトウェアとして、トライコヒーレンス解析の開発を行う。4年目では、3年目で開発したものを利用して、乱流による加熱特性の観測実験を行う。
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研究実績の概要 |
磁化プラズマ中では、多様なスケールで乱流が不安定化する。従来の磁化プラズマ中の乱流研究では、主にイオンラーマー半径程度の空間スケールを持つイオンスケール乱流に関する研究が発展してきた。
本研究では、イオンスケール乱流よりも小さいスケールに焦点を当てて研究を行うために、部分磁化プラズマ状態を実験で作り出し、その中での乱流素過程の解明を目的とする。部分磁化プラズマとは、電子のみラーマー運動を行う、すなわち磁化しており、イオンがラーマー運動を行えない、すなわち磁化していない状態のプラズマを指す。このような状態では、イオンのラーマー半径よりも小さいスケールを持つ高波数の乱流が不安定化しうる。本年度は、部分磁化プラズマ状態で高波数乱流に関するパラメータサーベイとして、中性粒子ガス圧とイオン質量をスキャン実験を行った。 ① 中性粒子ガス圧は主に、プラズマ中のイオンや電子と中性粒子との衝突周波数と関連する。ガス圧をスキャンした結果、ガス圧が低い場合にブロードな乱流スペクトル、ガス圧が低い場合は離散的なスペクトルが形成され,これらの状態間を遷移することが観測された。すなわち、ブロードな乱流スペクトルは中性粒子との衝突の効果で減衰し、離散的なスペクトルの成分は中性粒子との相互作用の中でも生き残るということが明らかとなった。 ② 質量数は密度や温度よりも制御性も高く、分散関係にも大きく影響する。この実験では、アルゴンで行われた実験を、希ガスのネオン、クリプトン、キセノンを用いて行い、分散関係の変化を調査した。その結果、アルゴンを使った放電と同様に離散的及び連続的なスペクトルが形成されることを確認した。また、位相速度が音速や反磁性ドリフト速度で決まることや、離散スペクトルがイオンバーンスタイン波のようなイオンサイクロトロン周波数間隔のピークを有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に予定していたパラメータスキャン実験を完遂し、学術論文として2報報告まで1年で至ったことは、想定以上の進展である。また、本年度の実験を通じて、さらに新しい計測として高速の電位計測や半径方向構造の計測が必要であることが見出され、これらの計測方法に関する検討が進展した。また2年目に予定している三次元速度場計測のためのマッハプローブについても設計が進展した。
このように、想定以上に速く成果報告をできた点や設計、新しい問題点の発見、翌年度へ向けた計測器の設計等が進展した点を考慮し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にパラメータサーベイが完了し、部分磁化プラズマ中の乱流の特徴が明らかになりつつある。さらに部分磁化プラズマ中の乱流の理解を促進するために、速度場計測および半径方向構造観測のための各種静電プローブの開発に着手する。速度場計測については、当初はキューブ型のプローブを検討したが、制作の困難性やプローブ自体が大きくなってしまうため、代替として先端をL字に曲げたマッハプローブを作成し、回転機構によって3次元速度場を観測することを目指す。半径方向構造の計測については、従来の半径方向プローブでは無視できない、シャドーイングや軸方向のズレの影響を排除するために、リング型のプローブを導入する。
これにより速度場との相互作用や乱流の空間構造の詳細が明らかになることが期待される。 さらに、計測器の回路を見直しプラズマ中の浮遊電位計測の広帯域化に挑戦する。これまでは、広帯域の計測が可能な密度計測のみで乱流計測を行ってきた。電位計測はプラズマ自身の抵抗と、ノイズ抑制用の同軸線によって、ローパスフィルタが形成されるため、帯域に制限がかかる。本研究の対象となる乱流は数100kHzであるため、1MHzまで位相遅れが生じないよう新規の回路を作成する。そのために、浮遊電位計測用のケーブルドライブ回路を設計・開発し導入する。
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