研究課題/領域番号 |
23K13083
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
皇甫 度均 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00870908)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | タングステン / ナノ構造バンドル / スパッタリング / ヘリウム不純物混合 / 再堆積 / プラズマー壁相互作用 / スパッタリングー再堆積 |
研究開始時の研究の概要 |
ヘリウム(He)プラズマ-タングステン(W)相互作用により生成される金属ナノ繊維が集積したバンドル構造(NTBs)の生成過程の詳細を明らかにする.プラズマ照射初期時における表面変化の様子を共焦点レーザー顕微鏡と電子顕微鏡により観測し,基盤の結晶方位がスパッタリング,fuzz生成,微小突起の形成に及ぼす影響を明らかにする.また,同一試料におけるプラズマ照射・表面観察の交互実施により,初期の結晶方位や微小突起形成と後期NTBsの関係を明らかにする.さらに,スパッタリング率など外部条件と成長したNTBs形状との関係性を解明し,核融合研究の進展に貢献するNTBs形成機構の総合的理解に寄与する.
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研究実績の概要 |
RFプラズマ装置APSEDASにおいてヘリウムガスと不純物ガス混合プラズマによるタングステンナノ構造バンドル(NTB)の形成を確認した。ヘリウムとアルゴン混合プラズマにおいては、基板と表面のNTB生成部がはっきり区別できるNTBが形成され、NTB表面は滑らかであるのに対し内部の断面には微細構造が存在した。アルゴンによるスパッタリングにより微細突起が削られたことに起因すると考えられる。アルゴン分圧が高まるほど断面の微細構造は無くなっていった。一方、窒素混合実験においては先行研究(NAGDIS-II)と同様、表面微細構造を有するNTBが形成された。類似した構造を持つNTB生成条件に対して先行研究と本研究の比較を行った結果、試料温度は100-200 Kほど小さい領域で生成され、既存の1400-1600 Kの生成域がさらに広がることを示唆した。また、ヘリウムのタングステンへのスパッタリング閾値(~110 eV)以下でのNTBの形成において、既存の照射量よりも少ない照射量での生成を確認した。試料の正味のスパッタリング率は先行研究と同じ範囲にあり、スパッタリング-再堆積課程がNTBの重要な生成プロセスであることを再確認した。 一方、実験の1次パラメータであるガス流量比及びガス圧力などに装置間で大きな違いがあった。分光計測による線スペクトル強度比から、APSEDAS容器内の実際のイオン比は定めたガス分圧比と大きくことなる可能性が示唆された。ガス分圧比とイオン比の違いは希ガスであるアルゴン混合時に特に激しく、今後イオン比計測を実施するとともに排気系を改良し実験条件の駆使範囲を広げる必要を認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガス系統の整備を行い、既存のヘリウム、重水素、軽水素のガス系統に加えて不純物ガス系統を稼働した。アルゴンガスとヘリウム混合プラズマを点火し、NTBの初期状態に当たる突起状構造を確認した。これらの突起は、滑らかな表面を持つ一方で断面には多孔性堆積層が形成され、ヘリウムバブルによるナノ構造化が示唆された。断面の空孔性はアルゴン分圧が低いほど高くなり、ヘリウムバブルの生成とアルゴンによる浸食-再堆積作用のバランスによって突起構造が変化することが示された。また、APSEDASにおいてヘリウムーアルコンのような希ガスー希ガスプラズマでは電離エネルギーの低いガスがプラズマの優占種となることが分かり、今後、ガス分率と実在するイオン分率の関係を明らかにすることが必要とされる。 不純物ガス系統を分岐し、窒素ガスの導入を可能にした。窒素-ヘリウム混合プラズマでは、ヘリウムがプラズマの優占種を占めており、従来と近い条件でNTBの形成が確認された。ただ、生成し成功した試料温度は従来より100-200 K程度低くまで分布し、NTBの生成領域が拡大可能性が示唆された。窒素混入プラズマによるNTBの形状は既存の先行研究における他の装置で示されたNTBの形状と酷似しており、スパッタリング-再堆積によるナノ構造の突起構造化が普遍的現象であることを改めて確認した。
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今後の研究の推進方策 |
当初、2年目計画は「(1)NTBs生成パラメータ探索(表面温度、ガス分圧、入射イオンエネルギー)を継続する」、「(2)同じ試料を用いてプラズマ照射-表面観察(走査型電子顕微鏡(SEM), 電子後方散乱回折法(EBSD))の交互実施を試み、W表面の結晶方位変化と表面構造変化の関係性を考察する」の2つである。 (1)に関しては実行準備が整いつつあり、イオンの存在比を把握するための分光計測系を整備する予定である。また、試料温度を低温にできる水冷バイアス試料台の準備を進める。NTBの生成を支配する条件は試料温度とタングステンの正味のスパッタリング率とされているが、APSEDASのアルゴン混合実験において、正味のスパッタリング率を試料温度がNTB生成範囲に存在してもNTBがナノ構造化しないことがあった。これは上述のアルゴンーヘリウムイオンの存在比による可能性があり、両者のイオンの存在比を直接・間接的に見積もることは急務となった。 (2)に関して、試料は予め機械研磨と電解研磨により鏡面仕上げにし、赤外炉にてアニーリング処理し、事前に再結晶を形成しておく。プラズマ照射時の温度をアニーリング温度以下に制御できれば、照射中の大幅な結晶形状の変化は防止できると考えられる。その試料において、一定フルエンスのプラズマ照射ごとに電子顕微鏡観察をすることが計画(2)の内容である。試料表面研磨の高度化やEBSD観察に学内別組織の協力を必要とするため、2年目においてはNTBの形成が確立した1-2条件においてプラズマー観察の交互実施を試す。
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