研究課題/領域番号 |
23K13084
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 史良 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (40846747)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 雪崩輸送 / マイクロ波反射計 / データ解析 / ヘリカル / トカマク / ECEラジオメータ / 磁場閉じ込めプラズマ / アバランチ / 乱流輸送 / 電子サイクロトロン放射計測 |
研究開始時の研究の概要 |
磁場閉じ込め核融合プラズマでは、エネルギー散逸過程として雪崩輸送が注目されているが、雪崩は様々な時空間スケールで無作為に発生するため、有効な計測法が確立されていない。本研究では、雪崩輸送の定量的な計測方法の確立を目指し、 (i)マイクロ波反射計を用いた計測法と(ii)データ駆動型アプローチによる評価方法により雪崩輸送を観測し、その発生機構や分布形成に及ぼす影響を実験的に検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、磁場閉じ込めプラズマにおける雪崩輸送(フラックス)を定量的に観測する手法を確立して、その物理機構を実験的に探究することである。手法として、(i)マイクロ波反射計を用いた直接計測法の開発と(ii)パターン抽出法を用いた実験データの解析を展開する。今年度の成果として、(i)に関しては、研究の主プラットフォームとなる京都大学のヘリオトロンJ装置で雪崩輸送を実験的に同定することができた。雪崩のフラックスの直接観測を狙う反射計計測に先立ち、高速サンプリングオシロスコープを用いたマイクロ波ラジオメータを開発して、ヘリオトロンJ装置にも雪崩輸送が存在することを発見した。雪崩輸送はこれまでヘリカル型装置では観測されていなかったため、トカマクプラズマで観測された雪崩輸送との比較を行った。加熱に対する雪崩輸送の反応性の差に関する知見が得られ、トカマクとヘリカルの分布反応性の違いの原因が明らかになる可能性が示唆された。また反射計の周波数掃印に関してベンチテストを行い、ヘリオトロンJ装置に取り付けて初期データを得ることができた。(ii)に関しては、JT-60Uのデータ解析を進めて、輸送障壁形成時における雪崩のダイナミクスに関する論文を出版することができた。さらに、パターン抽出法を空間方向だけでなく速度軸方向にも拡張して、雪崩に伴う位相空間揺らぎの応答について研究を進展させた。位相空間揺らぎは不安定性を駆動する自由度を持つため、輸送のダイナミクスの起源となる可能性が示唆されている。今後は位相空間構造が雪崩輸送にどのような影響を及ぼしているか、調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の手法である(i)マイクロ波反射計を用いた雪崩輸送量(フラックス)の直接計測法の開発に関して、やや遅れている。理由として、雪崩輸送の観測に実績がある、プラズマの電子サイクロトロン放射を計測するマイクロ波ラジオメータを優先して開発したからである。反射計による雪崩のフラックスを観測するために、まずヘリオトロンJ装置でどのような運転領域で雪崩が観測されるか検討する必要があった。これまでヘリカル装置では雪崩輸送は未観測であったため、高時間・空間分解能を有する高速デジタルオシロスコープを用いたラジオメータを開発した。結果として雪崩を観測することができたため、ヘリオトロンJを主プラットフォームに据えて、雪崩のフラックス観測に向けた研究を進めていくことができる。今年度は反射計の初期データを得ることはできたが、手法の有効性についての検討が進んでいない。次年度以降は反射計の導入をより進めて研究を展開していく。
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今後の研究の推進方策 |
(i)マイクロ波反射計を用いた雪崩輸送の直接計測法の開発に関しては、計画当初通り高速周波数掃印を利用した観測法の開発を進めていく。一方で反射計の初期データを解析すると、大きなノイズが混入してしまっている。ヘリオトロンJ装置は多数の高周波電源等ノイズ源が多いため、受信機やケーブルの配線等を改善する必要がある。また使用した反射計の観測周波数が低かったため、プラズマ周辺部(SOL領域)の観測となっている可能性があり、S/Nが十分でない可能性もある。現在はKバンド帯(15-27GHz)を使用しているが、ヘリオトロンJの反射計計測では、Kaバンド帯(26-40GHz)に実績がある。Kaバンドでも観測出来るように発信器及び受信機の開発を進めていく。 (ii)パターン抽出法を用いた実験データの解析に関しては、JT-60UとヘリトロンJのラジオメータ計測で得られたデータを解析していく。JT-60Uのデータに関しては、実空間パターンから位相空間パターンの抽出へ拡張し、位相空間揺らぎの物理を探究する。ヘリオトロンJに関しては、輸送障壁形成時に電子密度と電子温度揺らぎが非結合しているという、興味深いデータが観察された。一般的にヘリカル型装置においては、輸送障壁は電子密度のチャンネルに現れやすく電子温度には現れにくい傾向がある。輸送チャンネル間の非結合がどのように成立して分布形成に影響を及ぼすのか、データ解析を進めて明らかにしていく。
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