研究課題/領域番号 |
23K13096
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
秋山 進一郎 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (10963548)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | フレーバー自由度 / Wilsonフェルミオン / Gross-Neveu模型 / Silver Blaze現象 / 符号問題 / 行列積分解 / Grassmannテンソルネットワーク / ゲージ・Higgs模型 / 格子場の理論 / テンソルネットワーク / テンソル繰り込み群 |
研究開始時の研究の概要 |
格子理論の経路積分計算を行うテンソル繰り込み群(TRG)には、符号問題が原理的に存在しない。そのため、有限密度QCDに代表される基礎科学的に重要な理論への応用が期待されている。こうした理論の多くは、大きな内部自由度で記述される量子多体系になっている。しかし、内部自由度に富んだ理論ではテンソルネットワーク表現が巨大になるため、TRGの適用が困難になるという課題がある。この課題に対し本研究では、高次元系向きの情報圧縮手法、並列計算手法、TRGの計算精度の改良手法などを組み合わせることで、内部自由度に富んだ格子理論に適用可能なTRGアルゴリズムの確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、テンソルネットワーク法の一種であるテンソル繰り込み群(TRG)をさらに発展させ、内部自由度に富んだ格子理論に対する効率的な情報圧縮手法の開発とその応用を目指している。特に、フレーバー自由度を伴う格子フェルミオン系、フェルミオンを含んだ格子ゲージ理論をターゲットに、符号問題が生じるパラメタ領域での相転移現象解析に取り組む。 今年度は、フレーバー自由度を伴う格子フェルミオン系に対する新しいGrassmannテンソルネットワーク表現の構築に取り組んだ。具体的には、行列積分解を応用し、フレーバー数を仮想的な次元とみなすことで、経路積分のGrassmannテンソルネットワーク表現を多層化する手法を提案した。この手法を2フレーバーおよび3フレーバーWilsonフェルミオンからなるGross-Neveu模型に応用し、その経路積分がボンド次元4の多層テンソルネットワークとして厳密に表現できることを見出した。さらに、多層テンソルネットワーク表現の構造を保つような粗視化手法も考案した。この手法を用いることで、有限密度領域のゼロ温度極限で発現するSilver Blaze現象を再現することができた。特に、多層化しない2次元的なテンソルネットワーク表現を直接粗視化する場合と比べ、半分以下のメモリコストでゼロ温度極限の物理量を計算できることが明らかになった。なお、この研究成果はすでに学術雑誌に掲載され、それに基づく国内学会および国際ワークショップでの発表も行った。 この他、格子フェルミオン系に対するbond-weighted TRGアルゴリズムの開発と応用も進め、国際会議での成果発表とGitHubでのサンプルコードの公開も行った。また、4次元有限密度Z3ゲージ・Higgs模型の臨界終点の決定や3次元SU(2)プリンシパルカイラル模型のユニバーサリティクラスの決定にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでのテンソル繰り込み群によるフェルミオン系の研究はシングルフレーバーの場合に限定されていたが、本研究では行列積分解の方法を応用することで、3フレーバーまで取り扱うことに成功した。また、経路積分のGrassmannテンソルネットワーク表現を構築する際、従来的な方法ではフレーバー数に関して指数関数的にメモリコストが増大する問題があったが、本研究で提案した手法ではフレーバー数に比例する程度のメモリコストしか要求されない。この研究成果はすでに学術論文として出版されており、今後の研究を進めていく上で重要な知見が得られたと言える。 また、当初の研究計画を超える成果として、4次元有限密度Z3ゲージ・Higgs模型の臨界終点決定や3次元SU(2)プリンシパルカイラル模型のユニバーサリティクラスの決定にも取り組み、論文発表や国際会議発表を行った。前者は符号問題のある格子ゲージ理論であり、後者は非可換自由度で記述される格子模型であるため、いずれも本研究計画をさらに推進していく成果が得られたと言える。以上の理由から、当初の計画以上に研究が進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに3フレーバーのWilsonフェルミオン系に対する情報圧縮手法を構築することができたので、他の格子フェルミオンへの応用を進めていく。特に、高次元の格子フェルミオン系に対して同様の情報圧縮手法を構築していく。また、フェルミオンを含んだ格子ゲージ理論に対する情報圧縮手法の開発と応用を進めていく。
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