研究課題/領域番号 |
23K13101
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 一史 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD) (00850132)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2027年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 修正重力理論 / ブラックホール / 摂動論 / 重力理論 / 重力波 |
研究開始時の研究の概要 |
ブラックホール由来の重力波が検出可能となり、強重力場における物理の探査が劇的に進むことが見込まれる。今後一層詳細な観測により一般相対論では説明できない現象の発見も期待されるため、拡張された重力理論の枠組みにおいてブラックホール由来の重力波の予言を行い、観測結果をもとに重力理論を検証するための定式化が必要となる。本研究では、時空対称性の自発的破れに基づく低エネルギー有効理論の観点から、ブラックホール時空のまわりの摂動に対する有効作用を構成する。こうして得られる有効理論の枠組みでブラックホール由来の重力波の理論予言を行い、重力理論を模型の詳細によらず検証するための理論的基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
将来の重力波の観測によって、一般相対論では説明できないような観測結果が報告される可能性が高いことを考えると、一般相対論を超える重力理論を研究することは喫緊の課題である。このような動機から、これまでさまざまな拡張重力理論が提案されてきた。これらの理論はいずれも、計量テンソル以外に新たな自由度を導入することにより、一般相対論を拡張したものと理解することができる。このような拡張重力理論において普遍的に成り立つ性質を捉えるべく、計量に加えスカラー場を一つだけ含んだ重力理論であるスカラーテンソル理論が特に詳しく研究されてきた。 研究代表者は、時空対称性の自発的破れに基づく低エネルギー有効理論の観点から、スカラーテンソル理論におけるブラックホール時空まわりの摂動を普遍的に記述可能な枠組みを確立した。特に本年度は、球対称ブラックホールまわりの奇パリティ摂動について準固有振動を計算するためのパイプラインを構築し、一般相対論における球対称ブラックホール解であるSchwarzschild時空の場合からの差異を定量的に議論した。また、上記有効理論を、ベクトルテンソル理論を含むように拡張することに成功した。これらの結果は、ブラックホール由来の重力波により重力理論を検証する上で基礎的かつ重要な役割を果たすと期待される。 上記以外にも、場の高階微分を含んだ可逆な変数変換により生成される重力理論が現実の宇宙に存在する物質場と整合的に結合できるかを議論し、宇宙論観測による重力理論の検証に堪え得る理論のサブクラスを特定した。また、宇宙論の文脈で模型の詳細によらない定式化としてしばしば用いられるインフレーション/ダークエネルギーの有効理論を上記理論を含むよう拡張し、宇宙論的摂動の定式化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は2022年度に、スカラーテンソル理論においてブラックホール時空まわりの摂動を模型の詳細によらず記述可能な有効理論を構築した。本年度は、この有効理論の最初の現象論的応用として、球対称ブラックホールの準固有振動を計算するためのパイプラインの構築に成功した。さらに上記有効理論を、ベクトルテンソル理論を含むように拡張することに成功した。このように、ブラックホール由来の重力波により重力理論を検証するための理論的基盤の整備を着実に進めている。 以上のことから、本研究課題は現在までおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に球対称ブラックホールまわりの奇パリティ摂動に対する準固有振動に着目したが、今後はブラックホールの潮汐変形などを含む多角的な解析を進める。また、偶パリティ摂動の解析、より現実的な回転ブラックホールに対する有効理論の構築に関する研究も並行して進める。
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