研究課題/領域番号 |
23K13103
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松村 央 九州大学, 理学研究院, 助教 (20881569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 量子重力 / 開放量子系 / 対称性 / 量子もつれ / 量子力学 / 重力理論 |
研究開始時の研究の概要 |
重力理論と量子力学を統合することは現代物理学の重要課題である。近年、両理論の統合から予言される重力場の量子的な重ね合わせと、それに起因する量子もつれ生成現象が注目を集めており、量子と重力のクロスオーバー研究が発展してきている。本研究では、量子もつれという視点に基づき、重力場と量子的な物質のダイナミクスを整合的に記述する理論を探索する。その際にはユニタリー発展を含む一般の時間発展である力学的写像を考慮して、物質と重力場のダイナミクスを検討し、量子もつれが生成可能(または不可能)な理論を明らかにする。また得られた理論の低エネルギー・非相対論的な有効理論を調べていく。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、重力場と量子力学的な物体のダイナミクスを記述する理論を、ユニタリー発展を含む一般的な発展方程式に基づき構築し、重力による量子もつれ形成の可能性(または不可能性)を軸に分類することである。まず理論を構築するために、量子情報理論や開放量子系理論で知られている力学的写像という状態間の一般的な時間発展を記述する写像に注目した。特に摂動的な量子重力理論や場の理論がもつポアンカレ対称性を指導原理として力学的写像を構築する方法を提案した。
次に開放量子系で知られるGorini-Kossakowski-Sudarshan-Lindblad(GKSL) 方程式を採用し、ポアンカレ対称性を原理としてGKSL方程式の構築方法を提案した。また提案した方法からどんな方程式が得られるか具体的に調べるため、有質量スピン0粒子のGKSL方程式を導出した。さらにその方程式から散逸項入りのKlein-Gordon方程式が得られ、微視的因果律が成立していることを示した。本成果は論文としてアーカイブに投稿済みである。また今回得られた方程式が、開放量子系で考察されるシステム-環境モデルから得られるか議論している。
今回提案した構築方法を重力場(無質量スピン2粒子)に適用することができるが、しかしながら物体との相互作用を取り入れることはまだできていない。そこで構築方法の拡張や改善に向けて、摂動的に相互作用を導入する手法を探索している。具体的には重力場と有質量スカラー場の相互作用モデルを考え、ポアンカレ対称性を明示的に反映する散乱理論に基づき、GKSL方程式が導出できるか議論している。このように進めていくことで重力場と量子的な物体の理論を探索することにつながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重力場と量子力学的な物体を記述する理論的枠組みを議論した。具体的には、摂動的な量子重力や場の量子論で知られるポアンカレ対称性を基本原理として、量子開放系理論で知られるGorini-Kossakowski-Sudarshan-Lindblad(GKSL) 方程式の系統的な構築方法を提案した。一般的な時間発展の記述方法ができてきたため、量子もつれ形成に関する議論も進められる。そのため順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
重力場と量子力学的な物体を記述する理論的枠組みができてきたので、発展方程式の具体形を書き下し、方程式に現れるパラメータや得られる物理的予言や解釈について調べていく。続けて量子もつれ形成可能性について議論し、方程式のもつパラメータ空間を量子もつれが形成できる領域とできない領域に分けていく。その上で低エネルギー極限で得られる有効理論について明らかにし、実験検証の可能性について吟味していく。
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