研究課題/領域番号 |
23K13107
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
森 寛治 国立天文台, 科学研究部, 特別客員研究員 (50910816)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 超新星爆発 / アクシオン / ステライル・ニュートリノ / 重力崩壊型超新星 / 宇宙素粒子物理学 |
研究開始時の研究の概要 |
アクシオンは、量子色力学の強いCP問題と呼ばれる問題を解決するために1970年代に導入された未発見の素粒子である。重力崩壊型超新星爆発の内部で実現される極限環境ではアクシオンのような未発見の素粒子が生成される可能性がある。そこで本研究では、アクシオンの輸送を組み込んだ3次元超新星シミュレーションを実施し、超新星イベントからの重力波やニュートリノ信号に対する影響を予言する。
|
研究実績の概要 |
本研究計画では、アクシオン(axion)に代表されるような標準模型を超えた粒子の輸送を考慮した超新星モデルを開発している。2023年度は、成果の一つとして、アクシオンを考慮した2次元軸対称超新星モデルを開発し、査読付き論文を出版した。報告者は本研究を進める中で、アクシオンに対して開発した手法が他の種類の粒子にも広く適用できることに気が付いた。そこで現在、ステライル・ニュートリノ(sterile neutrino)と呼ばれる粒子を考慮した超新星モデルの開発を進めている。ステライル・ニュートリノは、素粒子物理学上の長年の未解決問題であるニュートリノ質量起源の説明において重要な役割を持つ未発見の粒子である。報告者は2023年度内にステライル・ニュートリノに対する計算を進め、すでに1本の論文を投稿中である。本研究では、質量150-200 MeV程度のステライル・ニュートリノに着目した。このような重いステライル・ニュートリノは恒星内部で光子と通常のニュートリノに崩壊し、超新星のダイナミクスに影響を与えうる。本計算によって、ステライル・ニュートリノによって爆発エネルギーやニッケル質量が増大すること、ニュートリノや重力波といったマルチメッセンジャー信号が変化することを定量的に示した。また、ステライル・ニュートリノの崩壊によって生成される通常のニュートリノが100 MeV程度の高エネルギーを持ちうることを示し、その観測可能性を議論した。今後は、引き続きアクシオンに関する計算を進めるとともに、ステライル・ニュートリノについても広い質量帯にわたって議論を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度内にすでにアクシオンに関する研究をまとめた論文を1本出版したほか、同様の手法をステライル・ニュートリノに対して適用した派生的な論文を投稿中である。したがって、現在のところ、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した計算では人工的に軸対称性を導入した計算を実施したので、今後は人工的な対称性を課さないアクシオン込みの3次元シミュレーションを実施する。これとともに、ステライル・ニュートリノについても計算を実施していく。とくに、質量eV程度の軽いステライル・ニュートリノは、いわゆる原子炉反ニュートリノ異常(reactor anti-neutrino anomaly)を説明する鍵となる可能性を秘めている。そこで、こうした軽いステライル・ニュートリノを考慮した超新星シミュレーションを実施する計画である。
|