研究課題/領域番号 |
23K13113
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野中 俊宏 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50874400)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | QCD相図 / 臨界点 / ゆらぎ / BES / STAR / Cumulant / バリオン・ストレンジネス相関 / 重イオン衝突実験 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らは、重イオン衝突を用いて宇宙の起源を探究する国際共同研究プロジェクト「STAR」の第一期ビームエネルギー走査実験のデータを用いて正味陽子数分布の高次揺らぎを解析し、QCD臨界点の兆候を世界で初めて報告した。より決定的なシグナルを見つけるため、BES第二期実験(BES-Ⅱ)が2021年に完了した。本研究では、BES-Ⅱ実験における保存量分布の揺らぎや保存量間の相関揺らぎの解析を、独自に開発した微弱な真の信号を高精度に補正抽出する手法を活用して行う。本研究によって、QCD相図、特に臨界点に関する情報を引き出し、「原子核物質の世界の相図」を解き明かすための革新的な1ピースを見つけ出す。
|
研究実績の概要 |
研究代表者らは、重イオン衝突を用いて宇宙の起源を探究する国際共同研究プロジェクト「STAR」の第一期ビームエネルギー走査実験のデータを用いて正味陽子数分布の高次揺らぎを解析し、QCD臨界点の兆候を世界で初めて報告した。より決定的なシグナルを見つけるため、BES第二期実験(BES-Ⅱ)が2021年に完了した。本研究では、BES-Ⅱ実験における保存量分布の揺らぎや保存量間の相関揺らぎの解析を、独自に開発した微弱な真の信号を高精度に補正抽出する手法を活用して行う。 BES-Ⅱ)データを用いた陽子数ゆらぎについては、論文が公表されるまで、その結果を公の場で発表することがSTAR collaborationによって禁じられている。したがって、申請者が令和5年度に国際会議、論文にて発表した内容は、BES-Iにおけるゆらぎ測定および保存量間の相関ゆらぎの測定結果が中心となっている。 申請者は、Heraeus seminar(2024年4月、ドイツ)、ISMD国際会議(2024年8月、ハンガリー)、APS-JPS Joint Meeting(2024年11月、アメリカ)において招待講演を行い、BES-Iデータの結果とその技術的な詳細、およびBES-Ⅱデータ解析への展望について議論した。さらに、バリオン数とストレンジネスとの相関ゆらぎの測定結果を初めて発表し、国際会議論文として成果の報告を行った[T. Nonaka, Universe 2024, 10(1), 49 (2024)]。 また、BES-Iにおけるゆらぎ測定とそれに必要な様々な補正手法についてまとめたレビュー論文を発表した[T. Nonaka, S. Esumi, IJMPA. 38, 28, 2330010(2023)]。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず陽子数ゆらぎについてである。令和5年度は、BES-Ⅱデータから加速器や検出器の不調等による雑データを取り除くデータクレンジングを行った。さらに、陽子数ゆらぎの値がビームの衝突点(Vz, ビーム軸方向)に依存することが判明したため、イベントをVzの値ごとに細かくクラス分けしてゆらぎを測ることにより、その効果を抑えることに成功した。また、検出効率のアクセプタンス依存性を高精度に補正するため、検出器シミュレーションを高統計で行っている。2024年4月現在、BES-Ⅱのデータのほぼ全てでこのシミュレーションを完了し、あと1つの衝突エネルギーを残すところである。
また、バリオン数とストレンジネスとの相関ゆらぎの測定も進めている。金金衝突200GeVのデータにおいて、ラムダ粒子およびグザイ粒子を含めて測定を行うことで、それらを含まずに陽子とK中間子のみを測定した場合と比較して、相関ゆらぎの値が9倍以上も増大することを確認した[T. Nonaka, Universe 2024, 10(1), 49 (2024)]。また、申請者自らが開発した、ラムダ粒子やグザイ粒子の再構成に伴う背景事象による効果を取り除く手法[T. Nonaka, NIMA1039,11,167171(2022)]をSTARの実験データに適用し、背景事象の寄与を正しく除去することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
BES-Ⅱデータにおける陽子数ゆらぎ測定については、検出効率を決定するためのシミュレーションが2024年4月には完了する予定である。その後迅速に結果を公表するため、投稿論文の準備を並行して進めており、2024年度前半には最終結果を発表する計画である。
BES-Ⅱデータよりも低いエネルギー領域(<7.7GeV)におけるQCD臨界点の存在可能性、、もしくは信号の消失を確認するため、固定標的実験(FXT)における測定(3.0~7.7GeV)も進めている。前方領域のアクセプタンスを測定するために導入された検出器(ETOF)のデータ較正、および検出効率を決定するためのシミュレーションも概ね計画通り進んでおり、パイルアップ補正[Nonaka, NIM, 2022]の適用も行っている。2024年度後半もしくは2025年度前半に最終結果を報告する計画である。
バリオン・ストレンジネス相関の測定が200GeVのデータについてほぼ完了しており、現在BES-Ⅱデータにおいての測定を進めている。その最新結果を2024年度前半の国際会議にて報告し、さらに2025年度前半の論文投稿を目指す計画である。
|