研究課題/領域番号 |
23K13144
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯島 陽久 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (90783952)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 乱流 / 太陽 / 太陽風 / 惑星間空間 / 磁場 / 磁気リコネクション / コロナ / ダイナモ / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
太陽大気の形成機構、高温のコロナと超音速の太陽風の物理的起源は、太陽物理学における長年の課題である。本研究では、上部対流層から太陽風加速領域までを包括的に取り扱う先進的な輻射磁気流体モデルを利用することで経験的な仮定を可能な限り排除し、大気加熱の直接的なエネルギー源である磁気対流からコロナ加熱・太陽風加速までの一貫した描像の構築を目指す。セルフコンシステントな太陽型星の大気形成機構を、観測的制約が豊富な太陽大気に基づいて構築することで、自転速度の異なる太陽型星や表面対流層を持つ小質量星を含めた恒星大気形成機構の統一的な理解に貢献出来ると期待している。
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研究実績の概要 |
本年度(2023年度)は、世界初となる太陽内部から光球、彩層、コロナ、太陽風までの一貫した数値シミュレーションを実施し、(1) 時間・空間平均された典型値としての観測量との比較、および(2) 計算領域内部でどのようにコロナ加熱・太陽風加速が起きているのかの解析を行った。その結果、ほぼ経験則を含まない第一原理的な計算でありながら、十分に観測される光球磁場、コロナ輝度、太陽風速度・密度の範囲内と言える現実的な大気が形成されたことを確認した。より厳密に言えば、コロナホールの境界付近から噴出する低速太陽風とみなせる計算結果であった。この大気形成過程をより詳しく理解するため、磁気リコネクションがコロナ中のエネルギー輸送にどれほど寄与するのかを定量的に評価する手法を考案し、シミュレーション結果に適用した。その結果、アルフベン波による磁力線に沿った輸送と、磁気リコネクションによる磁力線を横切る輸送が、両者同程度寄与していることが分かった。これまで数値計算コストの高さから、1次元的に扱えるアルフベン波の伝播・散逸のみを考慮したコロナ・太陽風モデルが多く構築されていた。本研究は磁気リコネクションという多次元的な物理過程がコロナ加熱・太陽風加速に定量的に重要であることを示した初の成果である。この結果は、Parker Solar Probe衛星などの近年の観測結果から推定される磁気リコネクションの重要性とも相補的であり、シミュレーション結果の物理的妥当性と発展性を支持するものと言える。
また関連する出来事として、サブ課題代表として参加するスーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム「シミュレーションとAIで解き明かす太陽地球環境変動」が採択されたため、2025年度までの計算資源を安定して確保出来た。今後さらなる発展的な数値シミュレーション研究を進めていけると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解析手法の開発とデータ解析がスムーズに進み、2024年度までかかると想定していた磁気リコネクションの定量的の寄与の評価を完了し、論文出版までたどり着いたため。また、2025年度末までの計算資源を確保出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は、新たな数値シミュレーションの実施、計算結果の解析を進めるとともに、観測データとのより詳細な比較を勧めていく予定である。
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