研究実績の概要 |
[本年度の研究成果] 火星サイズの原始惑星における大気-マントル-コア間での揮発性物質の分配を定量的に解明することを目的としていた。対象とする揮発性成分には, 水, 水素, メタン, 炭素を対象とした。これら揮発性成分の分配は惑星の内部磁場生成, マントル対流, 及び火成活動に重要な影響を及ぼす可能性がある。 具体的には, 先に述べた揮発性成分がマグマオーシャン-コア-原始大気の間でどのように分配されるかを定量的に分析するモデルを構築した。このモデルは, 原始惑星が形成される過程での集積率を熱源とするパラメータとして採用し, 一次元放射対流平衡モデルを構築することで、地表面温度から惑星ヒル面までの温度構造を数値的に再現した。地表面温度が典型的な岩石融点を超えた時点で、揮発性成分が惑星のマントルやコア、大気にどのように分配されるかを計算することが可能になった。
[主な成果の意義] 大気と内部への分配: 原始惑星が火星の現在の半分の大きさに達した段階で、水蒸気、炭素、水素が原始大気から惑星内部へと分配され始める。最終的に火星サイズに原始惑星が成長する頃には、現在の地球の海水量 (10^21 kg) ほどの水がマントルに, 約 10^20 kg の炭素と約 10^19 kg の水素がコアに分配されうることがわかった。本モデルによる結果は、現在進行中である InSightをはじめとする火星観測データとの関連付けを可能にすると考えられる。また惑星の大気成分の起源についての知識を拡張する重要な成果の第一歩となると期待している。
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