研究課題
若手研究
近年の惑星探査により、地球外の天体で液体の水が存在する、あるいは存在したことが明らかとなり、生命の存在可能性や起源から注目を集めている。しかしこれを厳密に制約するうえで重要な微量元素の振る舞いについてはほとんど理解が進んでいない。本研究では「太陽系内の水環境における微量元素の動態制約」を目的として、室内実験・環境調査を基に、生命に必要な環境が微量元素を含め成立する可能性と、そうした環境成立において重要な微量元素を明らかにすることを目指す。
近年の惑星探査により、地球外の天体で液体の水が存在する、あるいは存在したことが明らかとなり、生命の存在可能性や起源から注目を集めている。しかしこれを厳密に制約するうえで重要な微量元素の振る舞いについてはほとんど理解が進んでいない。本研究では「太陽系内の水環境における微量元素の動態制約」を目的として、室内実験・環境調査を基に、生命に必要な環境が微量元素を含め成立する可能性と、そうした環境成立において重要な微量元素を明らかにすることを目指す。本年度は木星のエウロパの海底を模擬した高温高圧での水-岩石反応実験を新たに行い、生命に必要な微量金属元素であるコバルトやニッケル、モリブデンの水中への溶出濃度の測定に成功した。これらの微量金属元素の水中での状態である溶存イオン、およびその濃度を支配する可能性のある鉱物について熱力学データを整理することで水質計算モデルを構築し、実験での濃度を支配した鉱物について検討した。またモンゴル南西部に位置する塩湖群の湖水に含まれる微量重金属のヒ素、ウラン、モリブデンの濃度について、複数年に渡る調査データを比較し、夏から冬にかけての濃度変化の傾向の一般化を目指した。これらの湖に含まれる溶存元素は、冬季には湖の凍結による濃縮と氷への取り込み、湖底堆積物への吸着、さらに濃縮による炭酸塩を主とした塩類の析出によるpHの変化に左右されうるが、これらの効果をすべて考慮した水質計算モデルを新たに構築した。この計算モデルと比較することで調査データの検討を行った結果、重金属ごとに湖底堆積物への吸着特性が異なるため、結果として湖の凍結に対しての応答も異なるものとなっている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
計画通り水岩石反応実験を開始し、岩石から溶解した微量金属の元素の濃度を測定、水質計算モデルの構築を並行して実施することでその濃度を支配した鉱物を推定したが、実験の岩石サンプルの分析による実際に含まれていた鉱物の制約にはまだ至っていない。またモンゴル南西部の塩湖群について本年度は追加調査を実施しなかったが、これはこれまでの調査で採取していたサンプルの再分析を優先したためであり、この再分析と計算モデルの構築により季節変化の傾向を確認できた。
申請書の通り、水岩石反応実験でのホスト鉱物を分析し、計算モデルと比較する。また岩石を用いないブランク条件での実験を実施し、微量元素濃度を測定することで、実験の信頼性を評価するデータを収集する。一方で、モンゴル塩湖群の調査サンプルについては氷の中に取り込まれた湖由来の成分の追加分析を行い、計算モデルの信頼性を高めるデータを収集する。現状の計算モデルでは説明ができていない調査データも含まれるため、これを可能とするよう計算モデルを改良する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Icarus
巻: 410 ページ: 115873-115873
10.1016/j.icarus.2023.115873
Nature
巻: 618 号: 7965 ページ: 489-493
10.1038/s41586-023-05987-9