研究課題/領域番号 |
23K13165
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
安武 正展 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 散乱・イメージング推進室, 研究員 (00852188)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 放射光X線CT / 岩石鉱物学 / 原始惑星進化 / ユレイライト / ダイヤモンド / 惑星分化過程 |
研究開始時の研究の概要 |
ユレイライトは、エコンドライトの一種であり、その特徴として炭素質物質を豊富に含むことが挙げられる。この中にはダイヤモンドが含まれおり、その成因は長年議論されているが未だ明らかにされていない。その原因として炭素粒子の組織が未だに詳細に解析されていない点が挙げられる。本課題は、放射光X線顕微鏡を用いた3次元的内部組織解析を主軸とし、マクロからナノまでシームレスにつなげるマルチスケール分析により、これまで明らかにされていなかった炭素粒子の組織を明らかにする。これにより、ダイヤモンドがどのように形成されたか考察するともに母天体モデルに対して制約を与えることを試みる。
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研究実績の概要 |
本年度は、南極隕石の7薄片試料およびDarAlGani999隕石の光学顕微鏡、電子顕微鏡による表面観察、レーザーラマン分光分析による表層鉱物相の同定を行った。また、DaG999中炭素質物質の放射光CTによる内部組織観察を行った。 (表面分析)カンラン石、輝石などに記録された衝撃変成作用の大きさとダイヤモンドの有無には緩やかな関係が現れることが分かった。一方で、先行研究で指摘されているように、衝撃度合いの弱い物にもダイヤモンドが現れることが確認された。その逆に、ガウジ様の強い剪断を受けたと考えられる組織を持つ試料で、少なくとも現在のところダイヤモンドが発見されずグラファイトが主体となっている例も確認された。このように、衝撃圧によるグラファイトからの固相相転移によるダイヤモンド合成において矛盾が残る結果が得られた。 (内部組織観察)DaG999の炭素質物質には海島状の粗粒状組織(タイプ1)と微細粒集合組織(タイプ2)の2種類の組織が存在する事が分かった。また、詳細観察の結果、両方の組織にマイクロダイヤモンドが含まれる事が分かった。 これらマイクロダイヤモンドに注目すると、大まかな特徴が類似している事が分かった。これは、しばしば数ミクロンサイズのマイクロダイヤモンドが集まった板状集合体として産する。3次元的にマイクロダイヤモンドの形状を確認したところ完全自形の立方体や八面体などの外形は持たないことが分かった。しかし、一部には半自形と思われる六角形状を持つことが確認された。マイクロダイヤモンド中には高頻度で鉄に富む包有物が含まれている。このような多様で複雑な組織はこれまで認識されておらず、これまで想定されているような単純プロセスによるダイヤモンド合成とは不整合である。 今後、さらに内部組織観察を進めることにより、発見された組織がユレイライト全体に共通のものであるか確認していく必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の進行状況は、概ね当初予定に沿って進行中である。一方で、分析データの包括性に関しては遅れが生じている状況である。当初研究計画時にはユレイライト中の炭素質物質中の組織は、衝撃合成説の根拠となるナノダイヤモンド多結晶体組織と惑星深部合成説の根拠となっている含マイクロダイヤモンド組織の2タイプを想定していた。しかし、内部組織観察を行った結果、従来の認識とは大幅に異なり単一岩相内、また単一炭素質物質内でさえ内部構造が多様であり、またこれまで確認されていた組織が入り乱れたような複雑な組織である事が明らかとなった。 そのため、本年度は当初予定していたサンプリング数を大幅に変更し、南極隕石の表面分析と平行して、DaG999中の炭素質物質の多様性を解明する事に注力した。また、念のため作成したCT試料中に含まれる物質が確実にグラファイト、ダイヤモンドである事を確認するために、予察的なTEM観察等を行う必要があった。そのため、1サンプルに注力することとなり相対的に包括性の確認に遅れが出ている。 また、申請者のビームライン高度化により担当ビームラインの課題申請数が大幅に増加しておりビームタイムが非常に混雑してしまっている。そのため、申請者の課題にまとまった時間を取ることが難しい現状になっていることも進行を遅らせている要因となっている。今後、実験スループットの向上することが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
申請者のこれまでの実験結果から、従来の衝撃合成説、CVD合成説、惑星深部合成説などはそれぞれ単一で発生しなかった可能性が浮上した。つまり、試料によって主要な合成プロセスが違う可能性や、複数のプロセスを経験したサンプルが存在する可能性が考えられる。特に、この仮説はこれまでの研究、また本申請でも確認された全体組織との不整合と強く関係していると思われる。次年度からは、衝撃変成作用の弱い試料に産する炭素質物質の内部組織観察を行う事で、衝撃の影響が弱い例の解明に注力する予定としている。 また、本年度明らかとなった組織多様性はこれまでのTEM観察の結果が組織全体のごく一部のみ見ていたことを示している。そのため、これまでの議論はサンプリングバイアスが異常に強くかかっている事が明らかである。次年度では本年度観察したCT試料を随時TEM試料に加工しタイプ1組織、タイプ2組織のそれぞれのTEMスケールでの組織を明らかにし、先行研究の結果との比較を始める。
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