研究課題/領域番号 |
23K13170
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 圭太 京都大学, 防災研究所, 特定研究員 (00962870)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 黒潮大蛇行 / 台風 / 水蒸気輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
黒潮大蛇行は、日本南岸で黒潮が大きく南に迂回する現象であり、日本周辺の海面水温を変動することで、日本の気候に季節を問わず影響を与える。しかし、深刻な被害をもたらす台風に対する黒潮大蛇行の影響に関する研究は、充分に行われていない。本研究は、雲解像領域気象モデルによる各種感度実験を駆使して、黒潮大蛇行に伴う海面水温変動が台風に与える影響を解明する。特に、台風強化に寄与する黒潮の遠隔影響(黒潮の海面水温変動が、遠くの台風への水蒸気輸送量の変化を介して、黒潮から1000kmほど離れた台風に影響を与えること)という全く新しい観点から、日本近海の台風の強度変化と黒潮大蛇行との間の関係性の理解を深める。
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研究実績の概要 |
事例解析として、2019年10月の大蛇行期に日本に接近した台風(Neoguri)に注目した。遠隔台風の強度変化に対する黒潮大蛇行の影響を調査するために、雲解像領域気象モデルによる再現実験(CTL run)と黒潮大蛇行に関連する海面水温(SST)変動に対する感度実験を実施した。感度実験は、東海沖の正のSST偏差のみを取り除く実験(NW run)、紀伊半島沖の負のSST偏差のみを取り除く実験(NC run)、両海域のSST偏差を取り除く実験(NWC run)を設定した。初期値・境界値には気象庁GSMとJCOPE2Mを使用した。
台風強度に関しては、10月17-18日の各実験間の中心気圧差は不明瞭であったが、発達期(10月20日)にはNW(NC)runの台風発達が明らかに抑制(促進)された。また、台風中心付近の風速もNW(NC)runではCTL runよりも減少(増大)した。このとき、Neoguriは東海沖(紀伊半島沖)のSST改変領域から約800km(1000km)離れた海域に位置していた。この結果は、大蛇行期の東海沖(紀伊半島沖)のSST昇温( SST降温)が遠隔台風の発達を促進(阻害)することを表す。NW(NC)runでは、東海沖(紀伊半島沖)の海面蒸発量に応じて台風への水蒸気流入量が減少(増加)し、台風内部の大気境界層内の相当温位も減少(増加)することで、台風中心付近の潜熱加熱が弱まっていた(強まっていた)。このような変化が遠隔台風の発達の抑制(促進)に寄与したと考えられる。また、2019年10月の黒潮大蛇行では東海沖のSST昇温が非常に顕著であったため、NWC runではNW runと同様な結果(黒潮大蛇行はNeoguriをより強めた)が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、事例解析によって黒潮大蛇行に伴う東海沖-紀伊半島沖の海面水温変動が遠隔台風の発達を実際に変調させていることを示すことが出来た。この成果は、国際学術誌に提出し、現在査読を受けている。また、翌年度の解析に必要なデータ整理も概ね完了した。そのため、当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は事例解析から得られた結果を強固なものにするために、日本に接近した台風に対して、黒潮大蛇行に伴う多様な海面水温変動を模した海面水温アンサンブル実験を実施する。この数値シミュレーションを通じて、遠隔台風の発達に最も大きな影響を与える黒潮大蛇行期の東海沖ー紀伊半島沖の海面水温変動パターンを同定する。また、シミュレーション結果を統計的に処理することで、黒潮大蛇行が遠隔台風に与える影響の定量的評価を試みる。
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