研究課題/領域番号 |
23K13179
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
阿部 隆博 三重大学, 生物資源学研究科, 研究員 (90809287)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 永久凍土 / 凍結・融解 / 地表面変位 / 干渉SAR / モデル化 |
研究開始時の研究の概要 |
永久凍土帯における凍結・融解に伴う地表面変位量とその空間分布は、衛星データから定量化できるようになりつつある。しかしながらその変位を引き起こす物理メカニズムについてはまだ十分に理解されていない。そのため、永久凍土の融解量を広域的に評価する研究が立ち遅れており、気候変動将来予測における大きな不確定要素の1つとなっている。そこで本研究では、衛星データを用いて永久凍土帯における地表面変位分布を明らかにする。そして、現地調査によって得られる土壌パラメータをもとに、地表面変位データを説明する物理モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
アラスカ・ダルトンハイウェイ沿いの観測サイト周辺において、Sentinel-1データを用いた干渉SAR解析を実施し、現地データやALOS-2との比較を行った。Sentinel-1は空間分解能がやや劣ることから、より細かい空間スケールを持つ凍土帯の地表面変位解析について、ALOS-2や現地データとの比較から解析パラメータについて新たな知見を得た。当初予定していたダルトンでの現地調査については、対象地域へのアクセスが想定以上に困難であり、現地観測機器設置の制約もあることから、調査箇所をよりアクセスのしやすいフェアバンクス近郊・ポーカーフラットへ変更した。現地カウンターパートと議論し、ALOS-2による干渉SAR時系列解析の結果をもとに現地調査箇所選定を行い、地温・土壌水分・変位を測定する観測機器を設置した。 北海道大雪山系については、9月に現地調査(周辺地形、植生)を行い、干渉SAR解析における位相基準点の候補地点を確認した。しかし、ALOS-2データはポーカーフラットほど多くなく、詳細な季節変化を検出するのは難しいため、後述する変位モデル構築を先行して進めた。2024年度打ち上げ予定の国産SAR衛星ALOS-4の観測が始まればデータが高頻度に取得されるので、その解析も視野に入れている。また、関連する研究者と、最新の北海道山岳環境変化に関する情報交換も行った。 変位モデル構築については、1次元の熱伝導方程式を解くことで得られる地温の鉛直分布とその時間変化から、水―氷位相変化モデルに基づくシンプルな2次元変位モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポーカーフラットにおけるALOS-2の高分解能モード(SM1)観測が想像以上に高頻度で続けられており、3シーズン分の詳細な地表面季節変位の時空間発展データが獲得できた。また、変位モデルの構築についても予定より前倒しでスタートし、順調に進んでいる。設置した現地観測データの回収については次年度以降になるが、ポーカーフラット内に長期間設置されている気象・土壌データからこの地域の凍土環境変化について確認できており、これらも変位モデルの境界条件として利用可能なものであることがわかった。大雪山系については、これまでに現地観測されている変位データからその様相が見えてきており、変位モデルに組み込む要素を考える上でとても重要な知見であった。 これらを総合的に判断して、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ポーカーフラットに設置した観測機器のデータ回収・メンテナンスを夏季に行う。得られた現地観測データとALOS-2データの解析結果との比較・考察を行い、論文化を進める。また、現地観測データを境界条件として組み込めるように、変位モデルの改良を進める。地表面植生・地形の違いを変位モデルにどう反映させるか、検討を始める。
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