研究課題/領域番号 |
23K13194
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
大柳 良介 国士舘大学, 理工学部, 講師 (90835729)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 炭素循環 / 炭酸塩 / 蛇紋岩 / マントル / 岩石ー水相互作用 / 鉱物炭酸塩化 / 二酸化炭素 / 蛇紋岩化作用 / 水循環 |
研究開始時の研究の概要 |
炭素は地球表層において主に二酸化炭素として存在し、環境に大きく影響を与えることが知られている。しかし、地球内部にはそれ以上の炭素が存在するとされている。地球表層の環境を理解するためには、地球内部の炭素はどのくらいで、どのように持ち込まれるのか、どのくらいの時間で地球表層にもどってくるかといった問いを明らかにする必要がある。本研究では、地球内部のマントルに焦点を当て、炭素がどのようなメカニズムでどれくらい保存されるのか?どのくらい長期間保存されているのか、を明らかにする。
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研究実績の概要 |
全地球炭素循環におけるマントルの役割を解明するために、本年度は前弧マントル域に浸透する流体量や化学組成を見積もった。 まず、計算対象する沈み込み帯として、冷たい沈み込み帯と暖かい沈み込み帯の代表格とされている東北日本と西南日本を選択した。これらの沈み込み帯へ沈み込む堆積物の化学組成をコンパイルした結果、東北日本では炭素が主に有機物として沈み込んでいる一方で、西南日本では有機物と炭酸塩の両方として沈み込んでいることがわかった。 これらの堆積物の化学組成や温度構造の違いを考慮し、熱力学的平衡の式(ギブス自由エネルギー最小化)を用いて、沈み込み境界に沿った鉱物共生関係や含水量を理論的に制約した。さらに、近年発展した深部地球流体モデルを用いて、平衡な流体化学組成をも同時に推定した。この計算では、炭素のみならずすべての主要元素(SiやAlなど)が流体に溶けることを加味することができ、地質学的に観察される元素移動履歴との整合性を担保できる。 この結果、東北日本と西南日本では、前弧マントル域に供給される流体量や流体化学組成が顕著に異なることがわかった。東北日本では、堆積物中に含まれる流体は深さ70km程度まで保持され、前弧マントル先端部(30km)に流体を供給しないことが予想された。深さ70km以深で放出される流体はSiに富み、炭素濃度はSi濃度より1桁低いことがわかった。一方で西南日本では、堆積物は前弧マントルの先端部(35km)から80km深の広範囲で流体を放出することが予想された。放出される流体化学組成は炭素に富み、炭素濃度はSi濃度より1桁ほど高いと予想された。 以上のことから、沈み込み帯の熱構造や沈み込む堆積物の化学組成の違いは、流体量や流体化学組成の違いを生み、前弧マントル域の構成鉱物にバリエーションを生んでいる可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、沈み込み帯における流体の実態(流体フラックスや流体化学組成)を制約することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、制約された流体量や流体化学組成を用いて、前弧マントル域を構成する鉱物のバリエーションを明らかにする。特に、沈み込み境界に沿った深さで、前弧マントルにおける鉱物共生がどのように変化するのか検討する。また、沈み込み帯の熱構造による違いがあるのかも検討する。鉱物共生が制約されたならば、前弧マントルにおける炭素固定量を評価する。さらに、東北日本や西南日本で適用された手法を全世界の沈み込み帯へ適用し、全地球規模の前弧マントルにおける炭素固定量の評価へつなげていく予定である。 また、並行して天然岩石の解析もすすめていく。すでに採取済みの炭酸塩鉱物を解析し、過去の地球でおきた炭素の固定プロセスを制約していく。
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