研究課題/領域番号 |
23K13204
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
塚本 雄也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 学振特別研究員PD (70890458)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 嫌気性マンガン酸化菌 / 初期地球環境 / 温泉 / 化学合成独立栄養細菌 / 鉄温泉 / 初期地球 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄・マンガン鉱床の年代分布などの地質学的知見から、微生物による鉄・マンガン酸化は始原的なエネルギー代謝機構の一つであると考えられる。しかしながら、当時の環境で生息可能な独立栄養な嫌気性鉄・マンガン酸化菌の単離例は極めて少ないため、その系統分布や生理生態に関する知見は乏しい。そこで本研究では申請者が鉄温泉からすでに共培養化に成功している菌群の単離化に加え、国内の複数の鉄温泉から嫌気性鉄・マンガン酸化菌を培養化し、系統分布や生理代謝情報を収集・比較することで、初期生命による鉄・マンガン酸化の妥当性を生物学的観点から制約することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究はいまだに培養例に極端に乏しい嫌気性マンガン酸化菌の培養を達成し、その系統情報や生理代謝機能を明らかにすることを目的とする。 本年度は(1)すでに取得済みの集積培養系の純化と(2)培養化菌群のゲノム情報の取得を行なった。(1) 実験開始当初は5種類ほどが優占する状況だったが、限界希釈法を活用することなどにより、ほぼ2種類まで純度を高められた。共培養系である可能性もあるため、単離に至れるかは不明であるが、引き続き純化に向けた培養を続けている。 (2) 集積培養系に対するショットガンメタゲノム解析を行いその微生物種の特定と生理代謝ポテンシャルの予測を行なった。その結果2種類のうち1種は種レベルまで同定でき、嫌気性従属栄養細菌であった。この菌は炭酸固定をはじめ、硫黄・窒素関連の代謝パスウェイを持っていないことからマンガン酸化に関与している可能性はとても低いと判断した。興味深いことにもう1種は新科相当の菌であり、炭酸固定経路も有していた。好気性マンガン酸化菌が用いるようなマンガン酸化遺伝子のホモログ配列は有していないことから未知な経路でマンガン酸化を行っている可能性が高い。また、この菌を含む目レベルに属する菌のゲノムを利用したパンゲノム解析により、この菌のみが有する781個の機能遺伝子を特定した。その半数は機能未知遺伝子であった。機能既知遺伝子についても現在精査しており、マンガン酸化機構の解明につながるような情報を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は集積培養系の純化が進み、嫌気的マンガン酸化に関与している菌を絞ることができた。さらにショットガンメタゲノム解析により、系統的に新規性の高い菌であることもわかった。さらにドラフトゲノム解析によりおおよその生理代謝機能を推定できた。このように嫌気的マンガン酸化機構の解明に向けて、基礎的な情報を得られたことから、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在2種類いる集積培養系をさらに純化できるか試みる予定である。その際に、マンガン酸化に関係ないと思われる1種は種レベルで同定できているため、添加物などを加えることで増殖を阻害するための方策を講じる予定である。現在取得しているゲノムはまだ完全でないため、ロングリードシーケンスを行うことで完全長ゲノムを構築する予定である。さらに生理代謝機能を同定するためにトランスクリプトーム解析などを行う予定ある。これらの解析を通して、嫌気的マンガン酸化機構の実態を明らかにする。
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