研究課題/領域番号 |
23K13212
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三浦 鴻太郎 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (30846829)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 積層構造材料 / 熱弾性 / 応力拡大係数 / パワーモジュール / 有限要素解析 / トポロジー最適化 / 熱弾性問題 / 理論解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,半導体分野ではパワーモジュールの大幅な小型化と大電力変換に伴い,著しい電力密度の上昇が生じ,動作温度が高温化している.パワーモジュールの信頼性を確立するためには,接合強度や熱負荷による接合界面の損傷メカニズムを明らかにしていく必要がある.そこで本研究では,力学的・熱的特性および層厚さの異なる弾性層を積層したモデルを考え,その内部にき裂が存在する熱弾性問題を理論解析する.
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研究実績の概要 |
パワーモジュールの構造信頼性に関連した積層構造材料の内部き裂に関する熱弾性問題を解析するにあたり,関連する理論的研究の文献調査を行ってきた.調査の結果として,ポテンシャル関数を用いる本研究の解析方法では,弾性体のき裂問題の基礎式に熱応力項を追加することで解析できる可能性が確認できた.また,弾性体のき裂問題では,き裂面での変位と応力の1組の双積分方程式が得られるが,熱応力を考慮した熱弾性問題では,3組の双積分方程式を解く必要があることが想定された.本研究では,双積分方程式を無限連立一次方程式に帰着させる解析手法を適用することを計画しており,本問題にも適用可能かどうか調査する必要がある. 本研究は,パワーモジュールも含めた電子配線構造の構造信頼性の向上を目的としている.その目的の一環として,商用有限要素解析ソフトウェアを用いた定常電流問題における電子配線構造のトポロジー最適化を実施した.商用有限要素解析ソフトウェアにはトポロジー最適化の機能を有するものも存在するが,適用できる物理問題や目的関数の設定に制約があるものが多い.本研究では,商用有限要素解析ソフトウェアのユーザーサブルーチン機能を用いて,目的関数を自由に設定できるようにトポロジー最適化のプログラムを実装した.目的関数には節点電位と入力節点電流の積の総和を設定して,配線抵抗が最小化されるような電子配線の構造最適化を実施した.いくつかの形状の異なるメッシュモデルを用意して最適化を実施した結果,電位固定部と入力電流指定部を最短距離で接続するように材料配置がなされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度には,積層構造の熱弾性き裂問題の解析の準備として,半無限体のき裂問題を熱弾性問題に拡張して,本解析手法の適用可能性を調査し,その後にき裂を有する単一厚板が異種材料に挟まれた熱弾性問題を解析する計画だった.関連する理論解析の文献を精査していく工程で解析手法を再考する必要があり,予想以上に時間を要してしまった.現状では,本研究で用いる双積分方程式を無限連立一次方程式に帰着させる解析手法が熱弾性問題にも適用できる可能性を確認した段階である.半無限体の解析には至っておらず,当初の計画からはやや遅れている.一方で,商用有限要素解析ソフトウェアを用いた定常電流問題における電子配線構造のトポロジー最適化を実施し,構造問題の最適化とは異なる傾向の最適結果が得られた.この結果は,パワーモジュールも含めた電子配線の構造信頼性に資する可能性があり,継続して取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に計画していた半無限体および単一厚板の熱弾性き裂問題への本解析手法の適用可能性を早急に確認する.2023年度には,さらに境界条件においては内部き裂と接合界面き裂の問題,応力拡大係数についてもモードⅠとモードⅡの結果を整理していく予定だった.本研究の主題は,積層構造の熱弾性き裂問題を解析することであるため,まずは理論解析の知見がある,内部き裂のモードⅠの応力拡大係数を整理していく解析に着手する研究方針に変更する.本研究においては,解析手法の適用可能性を調査する段階は時間を要する部分である.半無限体の熱弾性き裂問題の解析が出来れば,単一厚板および積層構造の問題への拡張は,比較的容易に進行すると想定している.2024年度には積層構造の熱弾性き裂問題に当初の計画通り,着手する計画である. 本研究では,有限要素解析を用いたパワーモジュール構造の構造信頼性評価も行っていく予定である.2023年度には,商用有限要素解析ソフトウェアを用いて定常電流問題における電子配線構造の配線抵抗を最小化するトポロジー最適化を実施して,構造問題の最適化とは異なる傾向の最適結果が得られた.今後は,目的関数を電子配線の原子流束の発散(Atomic flux divergence : AFD)に関連した物理量に設定して,最適化問題を定式化していくことを計画している.また,定常電流問題の解析の知見を利用して,理論解析と対応した積層構造材料の熱弾性き裂問題の解析にも発展させていく予定である.
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