研究課題/領域番号 |
23K13213
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
王 真金 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (60973584)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 分子動力学 / グラフェン / ウイルスセンサ / ボロンナイトライド / 振動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,申請者が独自に考案したサンドイッチ(グラフェン/ボロンナイトライド/グラフェン)構造設計により,電気化学信号変化や色光信号変化ではなく,重量情報を電気信号に変換する簡便な方式で空気中のウイルスをリアルタイム検出できる,高いウイルス検出精度と耐久性を両立したグラフェンバイオセンサを開発する.そのために,構造最適化を可能とする分子動力学解析と周波数領域分解法を融合した新規解析法を開発し,微小電気機械システム(MEMS)技術を応用したサンドイッチ構造バイオセンサの作製技術を新たに創出する.これにより,高いウイルス検出精度と耐久性を両立した最適構造を具現化する.
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研究実績の概要 |
本年度の研究活動は、COVID-19のパンデミックを受けて、空気中のウイルスを検出するための高感度ウイルスセンサ開発に注力している。このセンサの核となる技術は、グラフェンの共振周波数の質量変化に対する敏感性を活用することだ。特に、単層グラフェンの振動特性を利用した新しいウイルス検出方法の可能性を探るため、分子動力学モデルの構築に重点を置いて研究を進めた。 この年度の主な研究成果は、四周固定された単層グラフェンの振動モデルを確立し、特定の振動激励を用いてグラフェン層を活性化させることだった。その後、振動するグラフェンの原子の運動軌跡をFDD(周波数領域分解法)を用いて分析し、その振動モードを詳細に調べた。この分析により、微小な質量変化がグラフェンの振動特性に与える影響を把握し、ウイルス粒子の存在を検出するための基礎データを収集することができた。 これらの成果は、将来的にグラフェン/ボロンナイトライド/グラフェンの複合材料を用いた更に高度なウイルスセンサの開発に向けた重要なステップである。グラフェン単層の振動モデルを完全に理解することにより、サンドイッチ構造のセンサー設計において、どのように材料層を最適化すべきかの洞察を得ることが可能となる。 この研究は、グラフェンを利用したウイルス検出技術の基礎を築くものであり、その実用化が公衆衛生上の大きな進歩をもたらすことが期待されている。環境モニタリングや公衆衛生の分野において、リアルタイムでの病原体検出能力を向上させることができるため、感染症の早期発見と拡散防止に貢献することだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究進捗が予定よりも遅れている主要な理由について、詳細な説明を行う。研究計画では、サンドイッチ構造を持つグラフェン/ボロンナイトライド/グラフェン複合材料の振動特性を解析するための分子動力学シミュレーション手法の確立を目指していた。この目標を達成するためには、まず単層グラフェンの振動モデルを正確に確認し、その後に複合材料の振動モデルに進む必要がある。 しかし、現在使用している単層グラフェンの振動モデルでは、文献で報告されている共振周波数と一致しない結果が得られており、この問題が研究進捗の大きな障害となっている。文献値との不一致は、シミュレーションの精度や信頼性に直接影響を及ぼし、結果として次の研究ステップへの移行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、以下のステップで進める予定である。 1.力場の見直しと選定:現在使用している力場が文献と一致しない共振周波数を示しているため、グラフェン及びBN複合材料に適した新しい力場の選定を行う。最新の研究成果や既存のデータベースを参照し、より適切な力場を探索する。2.モデルの再構築:新しい力場を組み込んだ上で、単層グラフェンの振動モデルを再構築する。これには、振動激励方式の見直し、原子数の調整、固定方法の最適化が含まれる。3.シミュレーションの実施と評価:改善されたモデルで複数のシミュレーションを実施し、得られたデータを以前の結果や文献値と比較する。この段階でモデルの精度と信頼性を評価し、必要に応じてさらなる調整を行う。4.結果の検証と改善:新しい力場と改善されたモデルを使用して得られた結果を、実験データや他の計算結果と照らし合わせて検証する。また、研究コミュニティに対して中間報告を行い、フィードバックを求める。5.応用研究への展開:モデルの信頼性が確立されたら、次のステップとしてサンドイッチ構造のバイオセンサへの応用を検討する。具体的には、実際のウイルス検出への適用性を試験し、センサの性能評価を行う。6.公開と普及:最終的な研究成果は、学術誌に投稿することで学術コミュニティに共有し、関連する国際会議での発表を通じて、より広範なフィードバックと認識を得ることを目指す。
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