研究課題/領域番号 |
23K13221
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 舜典 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (60912582)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 転位 / 回位 / ねじり変形 / 残留ひずみ / 格子欠陥 / 環状結晶体 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,メビウスの帯型などの特異な幾何形態を有する環状結晶体の合成が報告されている.通常,こうした環状結晶体は平坦な結晶体がねじりや曲げを伴う残留ひずみ状態にあり,これが結晶体の実現しうる幾何形態を制限している.したがって,さらに複雑な環状結晶体の合成やその形態制御を行うには,この残留ひずみ問題を根本的に解決し,これを包括的に扱うことのできる理論的枠組みが必要である.本研究では残留ひずみの緩和機構として格子欠陥に着目し,格子欠陥を含むひずみ環状結晶体を扱うことの可能な連続体力学モデルを構築するとともに,このモデルを用いた包括的な数値解析を行うことで,理論としての体系化を行う.
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研究実績の概要 |
2023年度ではまず,転位を含む結晶体の連続体力学モデルに対する数値解析の枠組みを構築するとともに,これをプログラムに実装した.これを用いて単純な矩形の結晶に転位の一種であるらせん転位を導入し解析を行なった結果,変形や残留ひずみ,残留応力場の各々に対して,妥当な解析結果が得られることを確認した.特に,この枠組みにおける残留ひずみ・応力場の起源について,数値の結果を用いた幾何学的な解析を行うことで,新たな知見を得ることができた.また,残留ひずみが結晶にねじり変形を発生させ,これが先行研究の理論解析に基づく予測とほぼ一致することを示し,解析手法の妥当性を確認することができた.これらの成果に加え,数値解析を効率的に行うために,解析の枠組みに含まれる支配方程式の一つに対して解析解を構築することに成功した.これにより,解析解を解析の枠組みに導入することによる数値解析の高速化が図れる.これと同時に,この解析解を利用することで本研究課題の後半に実施を予定している回転性の線欠陥である回位の持つ幾何学的な特性の評価を可能とした.これにより,今後の研究計画の円滑な実施が期待できる.以上の成果を国内の学会で発表しており,2024年度には国際誌への投稿を予定している.これらの数値解析側の進展に加え,本研究課題で計画していた残留ひずみに関する卓上実験も遂行することができた.実験では,柔軟な弾性特性を有するエラストマー製の棒を作成し,ここにらせん転位を模倣した平面状の食い違いを導入した.この結果,数値解析の結果と同等のねじり変形を確認することができたことから,実験的に作成したエラストマー棒にも数値解析と同等の残留ひずみが発生していると考えられる.ここで得られた成果は2024年度に国際学会での発表を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を行う中で今後の研究計画の円滑な遂行に資すると期待できる知見を得たため,研究計画の一部を変更した.当初予定していた転位を含む結晶体の連続体力学モデル・解析の枠組みの構築と数値解析,および実験系の構築と卓上実験は計画通り実施した.一方,当初の計画にはなかった(1)支配方程式の解析解の導出,およびこの解析解を用いて(2)最終年度に予定している回位に関する予備的な研究を進めた.これにより,当初予定していた成果の国際誌への投稿と環状結晶体に対する解析については遅れが生じている.この計画変更に伴い,当初の研究計画からはやや遅れていると評価できるが,新たに得られた成果(1)および(2)は数値解析の高速化と後半の研究の予備的な解析に位置付けられるため,今後の研究計画はより円滑に遂行できると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画に沿い,数値解析では環状結晶体中のらせん転位に関して,結晶体の寸法等の条件を変化させた系統的な解析を行い,結晶のひずみエネルギーが効率的に緩和されるための条件を調べる.また,らせん転位に関する解析と並行して刃状転位や混合転位についても解析を行い,エネルギー緩和量を調査する.さらに,ここで発生するエネルギー緩和のメカニズムを ,残留ひずみ・応力場などの可視化結果,および卓上実験をもとに調べる.
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