研究課題/領域番号 |
23K13231
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
川村 拓史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (80965765)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | ガラス / イオン交換法 / 金属析出 / 銀 / 電析 / 電圧印加 |
研究開始時の研究の概要 |
化学強化ガラスや光導波路の作製技術として,イオン交換法が存在する.特に,固体イオン交換法によって銀イオンを添加したガラスに所定の電圧を印加すると,ガラス内部に銀の樹状結晶が形成することが明らかになっている.本研究では,ガラス内に金属析出物が形成する現象の詳細を明らかにするため,大気中で析出工程を観察できる実験系を作製し,高速度カメラや光弾性法によって微視的観察を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では,ガラス内金属析出現象のメカニズムを解明するため,大気中にてイオン交換・析出が可能な実験装置を作製し,析出挙動の動的観察を行った.特に実験系の雰囲気の影響についても調査するため,従来の手法と同様の真空チャンバも作製した.また,本研究では,金属析出現象のメカニズムについて解明するため,「添加する金属イオンの種類」,「場(電場,温度場,イオン濃度分布)の影響」,「亀裂形成,内部応力の影響」,「析出物周囲の雰囲気の影響」等について着目し,析出挙動を動的観察する. 本年度は主に銀と銅を使用して析出物の形成を行った.まず,銀での実験結果について述べる.銀を用いて電場形状を変化させながら析出挙動を観察したところ,樹状結晶が形成し,結晶の成長方向が電場形状に従っていることが明らかとなった.一方,従来の実験から析出時の電流値を極端に低下させ,ゆっくりと析出物を成長させたところ,結晶は樹状結晶ではなく,扇状かつ鏡のような形状で形成されることが明らかとなった.この扇状析出物は,3次元の樹木のように成長する樹状結晶とは異なり,平面の鏡のような形状で形成された.先行研究では,絶縁破壊モデルを用いて析出挙動をうまく表現することができたが,今回確認された形状は,絶縁破壊モデルのみで表現することは難しい.そのため,極端に析出物の成長が遅い場合,析出挙動は電場だけでなく,ガラス内の亀裂形成や内部応力分布等の影響が大きくなる可能性が示唆された.また,銅については,従来の実験方法では銅イオン添加領域の透過率の関係から,析出挙動の動的観察が行えなかったが,新たに作製した実験系では光量の問題を解決し,銅析出挙動を観察することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,大気中および真空中にてガラス内金属析出現象が観察可能な実験系を作製し,実際に実験条件を変化させて析出挙動の動的観察を行うことができた.本年度は主に大気中にて析出挙動を撮影したが,先行研究で撮影した真空中での析出挙動と比較しても大きな差異はないことを確認した.また,析出時の電流値を変化させて実験を行ったところ,先行研究では確認されていなかった析出形状が見つかり,その析出挙動から析出メカニズムの考察をさらに深めることができた.また,従来まではうまく撮影できていなかった銅析出挙動についても,光源等を工夫することでうまく撮影することに成功した. 一方,ガラス内部の温度場を変化させるためにレーザを利用する予定であったが,光学系やガラスの温度測定,温度場解析等の準備が遅れており,まだ十分に実施できていない.また高速度カメラにて亀裂の形成挙動を観察する予定であったが,こちらも光学系のセットアップがうまくいっておらず,撮影に至っていない.しかし,本年度は上述のように析出挙動を安定的に撮影可能な実験系を作製し,一部の条件にて実験や考察を行えていることから,一部の実験に遅れはあるものの,進展はあることからやや遅れていると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き各種実験条件を変更し,析出挙動の観察を行う.特に極低電流での析出は扇形のような析出物となり,従来の樹状析出物とは異なる挙動で析出した.そのため,この扇形の析出物が生じる現象に着目し,析出メカニズムの解明を試みる.現状,扇形の析出物が生じる原因は,電場だけでなくガラス内部の応力状態や亀裂の存在などが影響していると考えられる.そのため,光弾性法や数値解析により,ガラス内部の応力状態等について把握し,析出形状との関係を考察する.扇形の析出物以外にも,樹状析出物についても,従来の計画と同様,イオン濃度分布や電場等を変化させ,析出挙動の観察を行う予定である. また,亀裂の高速度カメラ撮影については,実験系を変更させ撮影を再検討する.
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