研究課題/領域番号 |
23K13236
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
竹内 雅耶 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (70889683)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ガスクラスターイオンビーム / 窒化シリコン / X線光電子分光 / X線光電子顕微鏡 / 原子層エッチング |
研究開始時の研究の概要 |
近年、溶液セルに液体を封止し溶液から励起された光電子の検出が可能となっているが、そのセルの光電子検出窓(SiNx膜)の極薄化は、その検出感度を大きく向上させる。我々は低損傷照射効果を示すガスクラスターイオンビームとジケトン分子を組み合わせた、SiNx膜の薄化技術を初めて提案・実証を行い、溶液セル窓極薄化への有効性を示してきた。しかし、SiNx膜に対するジケトン分子吸着機構およびGCIB照射による表面分子脱離機構はほとんど解明されていない。本研究ではその反応過程やエッチングメカニズムを明らかにすることにより、耐圧性の劣化を極限まで抑制した状態でSiNx膜の極薄化を目指す。
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研究実績の概要 |
X線光電子分光(XPS)やX線光電子顕微鏡(X-ray PEEM)などのphoton-in-electron-outによる測定を液体サンプルに適用することで、固液・気液界面の物性情報を取得することが可能となる。そのためには真空中で液体を封止するための液体セルを必要とするが、この液体セルの窒化シリコンメンブレン(光電子透過窓)は最重要用パーツであり、液体から光電子を取り出すだけでなく、真空隔壁の役割も果たしている。光電子の平均自由行程は数nmであるにも関わらず、メンブレンは1 atm以上の耐圧性を必要とする。つまり、窒化シリコン膜メンブレンの耐圧性を保持しつつ極薄化する技術が必要となる。本研究では、この窒化シリコンメンブレンの極薄化に低損傷エッチング可能なガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用い、その極薄メンブレンを用いた液体のphoton-in-electron-outによる液体検出の高感度化を実証する。そのために以下項目を行う。① GCIBを用いた窒化シリコンメンブレンの反応性エッチングおよびそのメカニズムの検討、② 極薄化された窒化シリコンメンブレンの耐圧性評価およびそのメカニズムの検討、③ 液体サンプルの高感度分析の原理実証、以上である。本年度は①および②を行った。ここで、反応性エッチングはO2-GCIBとアセチルアセトン(Hacac)を用いる。エッチングメカニズムを検討した結果、窒化シリコン膜表面での酸化膜形成とHacacによる反応層の生成、GCIBによる反応層の除去が連続的に発生し、反応性エッチングが進行していることが明らになった。また、GCIBによって極薄化されたSiNxメンブレンは、単一粒子ビームのAr+ beamを使った場合と比較し、窒化シリコンの優れた機械特性(耐圧性)を保持していること分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこでまで低損傷照射効果を示すGCIBを用いた窒化シリコン膜の反応性エッチング行ってきた。反応性ガスとして金属のエッチングに一般的に用いられるHacacを用いた。このエッチングメカニズムを明らかにするために、窒化シリコン膜に① O2-GCIB照射、② O2-GCIB照射後Ar-GCIB照射、 ③O2-GCIB照射後Hacacを導入しながらAr-GCIB照射したサンプルを作製し、XPS測定による表面の化学組成の違いを検討した。その結果、条件①、②では酸化層(SiO2層)に由来するピークが見られた。これらの結果はAr-GCIBのみの照射ではSiO2は削れないことを示している。一方条件③ではSiO2成分の減少が見られた。 これは、HacacがSiO2と反応しエッチングされていることを示している。上記より、エッチングメカニズムは以下が考えられる。 (a) O2-GCIB照射によるSiNx膜表面の酸化層の形成、(b) Hacacと酸化膜の反応による反応層の形成、(c) O2-GCIB照射による反応層の除去。(a)~(c)の工程が連続的に発生することで窒化シリコンの反応性エッチングが生じる。上記の内容は、国際誌(M. Takeuchi, R. Fujiwara, N. Toyoda, J. Jpn. Appl. Phys., 62, SG1051 (2023))に掲載された。また、我々は、窒化シリコンメンブレンの耐圧性を試験するためのシステムを構築した。その結果、GCIBよって極薄化された窒化シリコンメンブレンは、Ar+ beamで極薄化された場合と比較し、より高い耐圧性を示すことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
GCIB照射後の窒化シリコンメンブレンはAr+ beamと比較し、その耐圧性が保持されることを示したものの、そのメカニズムについては、研究成果発表を行っていない。本年度は、そのメカニズムの詳細について、国際会議での発表を検討している。また、今後は液体セルに液体を封止し、X-ray PEEMおよびXPS用いて窒化シリコン膜極薄化による液体検出の高感度の原理実証を行ことも検討している。
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