研究課題/領域番号 |
23K13243
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
赤田 圭史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50815892)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | レオロジー / 非ニュートン流体 / 小角散乱 / コロイド |
研究開始時の研究の概要 |
高濃度のシリカコロイド懸濁液は、一定以上のせん断をかけると粘度が急増するシアシックニング(shear thickening)と呼ばれる特性を示す。シアシックニングを起こす臨界剪断速度は粒径が小さくなるにつれ急増する。この現象はインクジェットや血栓症血管の血流中でもみられるが、これほどの高速せん断は実験的再現が難しく現象の理解が進んでいない。このせん断領域での挙動を解明するため、申請者は高速パルスせん断で10の6乗 1/sの高速せん断を印加するセルを開発する。このセルと先端計測を組み合わせることで、μsecの高速時間分解レオロジー測定を創出し、シアシックニングに伴う相転移の過渡現象を解明する。
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研究実績の概要 |
高濃度のシリカコロイド懸濁液は、一定以上のせん断をかけると粘度が急増するシアシックニング(shear thickening)と呼ばれる特性を示す。シアシックニングを起こす臨界剪断速度は粒径が小さくなるにつれ急増する。この現象はインクジェットや血栓症血管の血流中でもみられるが、これほどの高速せん断は実験的測定が難しく現象の理解が進んでいない。このせん断領域での挙動を解明するため、申請者は高速パルスせん断で10の6乗 1/sの高速せん断を印加するセルを開発する。このセルと先端計測を組み合わせることで、μsecの高速時間分解レオロジー測定を創出し、シアシックニングに伴う相転移の過渡現象を解明する。 シアシックニングはせん断を加えた動的なプロセスで発生するので,応力印加と物性計測を同時に行う必要がある。本研究ではX線透過レオメーターセルを使った粘度と小角X線散乱(SAXS)と極小角X線散乱(USAXS)の同時測定(Rheo-SAXS/USAXS)によって,リアルタイム構造観察によるコロイド粒子の構造変化解明に取り組んだ。 Rheo-SAXS/USAXS測定に対してトリガーシステムを組み合わせることで、世界初となる1秒以下の高速時間分解rheo-SAXS測定を実現した。濃厚シリカ懸濁液に対する測定から,せん断速度に応じてシリカ粒子がコロイド結晶を形成することを明らかにした。この結晶融解プロセスを時間分解測定することで,衝撃せん断に特有のコロイド結晶融解プロセスを見出した。 さらにピエゾ動作する自作せん断セルも開発し、μLの微小量サンプルに対して、せん断同時計測が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は円筒型レオメーターを使用して,SPring-8 BL40XU/BL19B2/BL20XUビームラインにおいて、シリカコロイド懸濁液のシアシックニングプロセスにおける高速時間分解Rheo-SAXS/USAXS測定技術を開発した。時間分解測定のために、高速シャッターと検出器、高速カメラを組み合わせたトリガーシステムを構築した。この技術開発によって、USAXSで10ms、SAXSで1msの時間分解Rheo-SAXS/USAXSの測定を実現した。得られた結果を詳細に解析し、シミュレーションの結果と比較して、コロイド結晶が溶解する初期段階における,衝撃せん断に特有のプロセスを明らかにした。この成果は査読付き投稿論文として投稿中である[K. Akada, et al., submitting]。 高速せん断セルについても開発を進め,実用段階に至っている。平行平板で数マイクロLの微量の溶液サンプルを挟み,ピエゾ駆動で往復の応力を印加可能なマイクロセル作製に取り組んでいる(図 6)。現在までに試作機を使って,自作SiNメンブレンでシリカコロイド溶液を挟み、10 マイクロsecの時間分解SAXS測定に成功している。これにより>10^5 s-1の発振を実現し,シアシックニング試料が短時間で配向が変化する結果を得ている。開発セルについては特許を出願し[レオロジー測定装置,特願2024-056285],論文化に向けた性能評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにRheo-SAXS/USAXSの技術開発、1 ms時間分解のRheo-SAXS測定と、10 ms時間分解のUSAXS測定を実現した。高速シャッターを持ち込み自作の制御プログラムでビームラインの測定系と連動させて入射光を切り出すことで,10 ms以下の時間スケールでのストロボ撮影に成功している。 現在はこの時間分解能をμsまで高性能化すべく,技術開発を進めている。マイクロsecの時間分解測定では,各デバイスの動作タイミングの同期が重要になるので,せん断動作のタイミングを直接検出する改造を行う。短時間露光で強度が弱まった散乱プロファイルは,繰り返し測定の積算でS/N比を上げる。 平行して微小液体に対してシアシックニングを発生させる高速せん断セルについても、高速せん断測定を実現する目処が立っている。今後はより高速・連続動作を実現するため,電源の更新を行い,目標とする10^6 s-1 の連続発振を実現する。このセルで回転式レオメーターで実現できない高速せん断速度領域における,高速レオロジー計測を進める。
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