研究課題/領域番号 |
23K13252
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
川口 美沙 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00973570)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 光弾性計測 / 偏光計測 / 流動複屈折 / 懸濁液 / 混相流 / マイクロ流体 / レオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
粒子挙動が懸濁液レオロジーに与える影響を解明するための,光弾性計測を用いた粒子慣性移動を伴う非定常懸濁液流れの応力場評価手法を構築する.粒子応力テンソル成分を初めて実験的に抽出し,モデルを構築する.これにより,慣性マイクロ流体とレオロジーを橋渡しすることで,レオロジー分野において重要な粒子挙動とレオロジーの関連性の解明に加え,非接触実効粘度分布計測の実現,さらには流動制御による効率的な流体輸送,機能性流体の開発に繋がることが期待される.
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研究実績の概要 |
本研究は,懸濁液流れにおける粒子挙動がレオロジーに与える影響を解明するため,光弾性計測を用いた粒子慣性移動を伴う非定常懸濁液流れの応力場評価手法を構築し,粒子応力テンソルの実測およびモデル構築を目的としている.粒子応力テンソルは,粒子に働く流体力から求められる Stresslet テンソルを用いて算出され,理論的・数値的に評価されてきたものの,実験的に計測することは困難である.本課題では,この粒子応力テンソルを光弾性計測を用いて実験的に抽出し,流体応力場計測をベースとして懸濁液のレオロジーを議論する. 2023年度は,光弾性計測を用いた流体応力場評価手法の構築に取り組んだ.具体的には,Hele-Shaw流れを対象として,光弾性計測を行った.ここでは,懸濁液流れの検討の前段階として,実験計測の定量的な議論のため,単相もしくは液-液二相流を計測対象とした.速度分布の理論解を元に算出した応力テンソルから主応力差に比例する量である位相差を算出し,得られた位相差分布の解析解と実験結果を比較した. その結果,単相流の場合は,計測領域が薄いために考慮することが必要となる非ニュートン性およびセルギャップ間の3次元性の影響を考慮することにより,解析解と実験結果が定量的に良好に一致することを確認した.また,液-液二相流の場合は,界面不安定挙動に関連した速度プロファイルの変化に対応すると推察される,特徴的な位相差分布が界面近傍において観察された.これらの成果は,2件の国内学会および2件の国際会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,平行平板間流れの光弾性計測結果を解析解と比較することに想定以上の時間を要したため,懸濁液流れの光弾性計測までは行うことができなかった.しかし一方で,次年度に予定していた本研究で使用予定のゲルビーズの量産方法検討を先行して進め,実験系構築は完了しており,使用予定の粒子径のビーズを製作するための条件の見当がついている. さらに今後,実験計測と比較検討に用いる数値計算では,懸濁粒子の運動と懸濁液の実効粘度の関連を明らかにするための解析を進めている.数値計算では,流体力を受けて並進・回転運動をする粒子の運動を能動制御することで,粒子の運動が懸濁液の実効粘度に与える影響について調査した.これにより,粒子挙動および流体力学的相互作用に関する新たな知見が示唆されつつある. 以上の理由から,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度に得られた液相のみのHele-Shaw流れの光弾性計測の成果を学術雑誌(Experiments in Fluids)へ投稿する.また,固体粒子もしくは作製したゲルビーズを懸濁させた流れ場の光弾性計測を行い,粒子まわり,粒子-壁面間および粒子内部の位相差分布の特徴を数値計算結果との比較により考察する. 今年度の実験により,速度プロファイルの変化による位相差分布の違いを定量的に議論することができたため,今後は懸濁液流れのPIV計測を行い,速度プロファイル変化を元にした懸濁液流れの位相差分布を算出し,偏光計測結果と比較することで,粒子を含むことによる位相差分布への寄与を評価する.ここでは,比較的レイノルズ数の低い流れから,粒子慣性移動を伴う場合まで,幅広い条件での計測を行い,粒子分散状態の違いによる実効粘度の違いをマクロな視点で定量的に評価する.その後,粒子挙動を考慮したミクロな視点での数値解析によるモデリングを行い,実験結果の比較検討により,粒子応力テンソルを抽出する.以上より得られた成果を学術雑誌へ投稿する.
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