研究課題/領域番号 |
23K13278
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
田尻 大樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90944124)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 健全性評価 / 非線形特性 / ニューラルネットワーク / 準線形化 / 同定 / 構造物 / 非線形 / 振動抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では構造物の非線形性を準線形化する独自のニューラルネットワークにより数学モデルを構築し、振動を計測するだけで振動工学の原理に基づいて異常を同定できる健全性評価手法を確立する。特筆すべきことは、提案する数学モデルは構造物の非線形性を適切に無視した従来の数学モデルとは全く異なることと、振動抑制装置を積極的に加振器として利用することである。 本研究により、非線形振動成分を考慮した健全性評価を可能にし、SDGsNo.11 goalの実現を加速させる。
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研究実績の概要 |
持続可能社会の実現に向け,ビルなどに代表される階層構造物の(A)振動抑制や(B)健全性評価の新しい技術が提案されている.これらの技術は,数学モデルベースで議論されるが,(A)と(B)を切り分けて検討することが多い. 本研究では,これらの技術を統合し,数学モデルの構築から振動抑制,健全性評価までを一気通貫する手法を検討する.このとき,振動抑制には独自の考えに基づく付加振動系を用い,さらにこれを積極的に利用して健全性評価を行うことを考える.なお,階層構造物の非線形性をニューラルネットワーク(NN)により表現し,それを準線形化した数学モデルを扱うこととする.本研究により,SDGs No.11, No. 12の実現を加速させる. 本年度は,第一に,振動抑制と健全性評価のどちらにも利用できる付加振動系の構造を検討した.具体的には,パッシブ型動吸振器の質量要素の一部を,剛性可変・減衰可変式のアクチュエータに置き換える構造とした.この剛性と減衰の大きさを制御することにより,地震発生時には対象とする階層構造物の振動を抑制し,通常時は階層構造物の健全性評価のために振動を発生することができる.この考えを具現化する数学モデルに基づく数値シミュレーションにより,検討手法の妥当性を確認した. 第二に,対象とする階層構造物の非線形特性を準線形化した数学モデルに基づいて,健全性評価(特性パラメータ同定)を行う手法を検討した.実際の(実験装置の)複雑な非線形特性を扱う前に,振動工学で一般的に扱われる非線形特性を準線形化したうえで,それを含めて特性パラメータを同定する問題を考え,数値シミュレーションにより検討手法の妥当性を確認した. 今後,付加振動系の製作と実験による妥当性検証,実際の非線形特性をNNによりモデル化して準線形化することの妥当性検証,非線形特性を含めた健全性評価手法の妥当性検証を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の研究実績の概要に沿って,研究の進捗状況を三つのプロセスに分類し,以下にまとめる. ①付加振動系の構造を検討し,パッシブ型動吸振器の質量要素の一部を,剛性可変・減衰可変式のアクチュエータに置き換える構造とした.この剛性と減衰の大きさを制御することにより,地震発生時には対象とする階層構造物の振動を抑制し,通常時は階層構造物の健全性評価のために振動を発生することができる.この考えを具現化する数学モデルに基づく数値シミュレーションにより,検討手法の妥当性を確認した.ただし,この段階では対象とする階層構造物の非線形特性を考慮していない.この内容について,204年3月に1件の国内学会発表を終え,2024年8月に1件の国際会議発表を控えている. ②階層構造物の非線形特性を準線形化した数学モデルに基づいて,健全性評価(特性パラメータ同定)を行う手法を検討した.実際の(実験装置の)複雑な非線形特性を扱う前に,振動工学で一般的に扱われる非線形特性を準線形化したうえで,それを含めて特性パラメータを同定する問題を考え,数値シミュレーションにより検討手法の妥当性を確認した.この内容について,2024年9月に国内学会発表を控えている. ③階層構造物の実験装置を試作した.階層構造物の周波数応答を計測できることを確認したが,非線形特性のNNによるモデル化する手法の検討を現在進めている段階である. 以上のように,一部継続的に進めるプロセスはあるが,本研究課題の研究は順調に進展しているため,「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した.
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今後の研究の推進方策 |
上述の現在までの進捗状況で述べた内容に沿って,今後の研究の推進方策を三つのプロセスに分類し,以下にまとめる. ①付加振動系を製作し,実験による妥当性の検証を行う.具体的には,既に試作を終えた階層構造物の,振動抑制と健全性評価を行うための付加振動系を設計する.このとき,振動抑制については,対象とする階層構造物の最低次振動モードの際大振幅を抑制するように,振動工学に基づいて最適設計する.また,健全性評価のためのアクチュエータは購入済みであるため,付加振動系の製作が済み次第,動作確認を行う.その後,実験による妥当性検証を進めていく. ②実際の(実験装置の)非線形特性をNNによりモデル化し,その非線形特性を準線形化する.具体的には,非線形特性を同定するためのNNの構造の検討,学習データの取得,学習・テストを行う.NNの構造については,科研費「研究活動スタート支援」で構築したNNの構造を参考にする予定である.学習データの取得については,上記①で説明した実験により,データを取得する.学習・テストについては,取得したデータを用いて実行するが,構築したNNの構造が学習に最適であるかどうかを判断する必要があり,最適でない場合はNNの構造を再検討する.このプロセスにより非線形特性をモデル化できた場合,その準線形化を行うことができる. ③非線形特性を含めた健全性評価を行う.健全性評価は正常時と異常時の振動応答からと特性パラメータの変化を求めることで実施する.実験装置における異常の設定は,階層構造物の柱(はり)のばね定数を低下させる設定とする.具体的には,はりの板厚を小さくすることではりのばね定数の低下を実現する. 以上の検討を適宜進めていく.
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