研究課題/領域番号 |
23K13306
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小平 大輔 筑波大学, システム情報系, 助教 (20880777)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 電力取引 / 強化学習 / 太陽光発電予測 / 電力市場価格予測 / 蓄電池 / アグリゲーション / 電気自動車 / 発電量予測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、分散再生可能エネルギー発電を集約する電力アグリゲーターの不確実性と制御性の課題を強化学習アルゴリズムによって解決することを目的とする。実証試験を通じてアグリゲーションの実現性を示し、電力市場に高度な調整力を持つアグリゲーターの実用化を促進する。
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研究実績の概要 |
本研究ではアグリゲーターが複数の需要家を制御する前段階として、住宅用のPVと蓄電池を保有する需要家1軒の電力取引の収益向上を目的に、強化学習ベースの蓄電池運用計画を決める手法を提案することを目的とした。手法としては気象庁が予測を行い、公開するGPVデータから将来の天候に関する予測データを取得し、PV出力予測やスポット市場価格、インバランス料金といった電力価格予測を行い、深層強化学習のモデルによって充放電計画の策定を行った。PV出力予測においては、これまでの先行研究が決定論的予測であったところを、予測区間をもった確率論的予測を用いることで、予測誤差を考慮することとした。以下に本研究で得られた知見を述べる。 1.将来のPV出力や電力価格を、GPVデータを用いて予測することは可能であるが、前提としてGPVデータが予測されたものであり、さらにスポット市場締め切り前となると実需給時間帯の30時間から50時間程度前の予測データを用いなければならないため、すでに予測の誤差があることを考慮しなければならない。特に天気が急激に変化する場合はGPVデータにはその情報は含まれにくく、実績と大きく乖離する可能性がある。 2.スポット市場締め切り前に充放電計画を策定し、それに従う動作モードでは、蓄電池を用いない場合と比較して、収益が約160%増加した。 3.実需給直前に改めて充放電計画を再策定するreal timeモードでは、蓄電池を用いない場合と比較しても収益が悪化した。これは深層強化学習モデルが考慮すべき時間幅や、報酬設計がreal timeモードの環境下では不適切であったことが原因である。 5.収益を向上させるためにはインバランスの削減が必要である。売電の収入に関しては、充放電計画によって売電収入を向上させることができるが、インバランスが発生すると、その収入を単純に打ち消す結果となってしまう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽光発電の予測、電力市場価格の予測の結果を用いて、PPOの強化学習モデルが収益性を向上させる蓄電池の充放電のスケジュールを生成できることを確認できたことは目標の一部を達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
・予測誤差を考慮するために、現在のモデルでは太陽光発電の予測を区間幅(例えば90%,50%,10%)といったもので実装しているが、実際には確率分布そのもの(正規分布になるのであれば中央値と分散などが考えられる)を与える方が現実の予測を良く反映していることになる。正規分布でない一般的な確率分布のパラメータをどのように設定して強化学習モデルへ与えるかを検討する。 ・将来のPV出力や電力価格を、GPVデータを用いて予測することは可能であるが、前提としてGPVデータが予測されたものであり、さらにスポット市場締め切り前となると実需給時間帯の30時間から50時間程度前の予測データを用いなければならないため、すでに予測の誤差があることを考慮しなければならない。特に天気が急激に変化する場合はGPVデータにはその情報は含まれにくく、実績と大きく乖離するパターンがあり、改善の余地がある。予測を実受給の直前(30分前等)にもう一度おこない充放電スケジュールを再策定するreal timeモードを開発したが、現実にはうまく動作していない(収益性が逆に悪化してしまう)。強化学習モデルに与える報酬を事前のスケジューリングを行う時とは異なる設計にする必要がある。
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