研究課題/領域番号 |
23K13315
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
高橋 翔太郎 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (00896566)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | コモンモードノイズ / EMI / PWMインバータ / パッシブEMIフィルタ / アクティブEMIフィルタ / モータドライブシステム / コモンモードインダクタ / アクティブフィードバック / キャパシタ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,小型のキャパシタを用いたアクティブフィードバック(AFB)回路の適用により,磁性材料の特性に起因するフィルタインダクタの小型化に対する制限を打破し,ノイズフィルタの大幅な体積削減を実現する。研究代表者がこれまでに確立したフィルタインダクタの浮遊容量推定法を用いることで,寄生インピーダンスを含む,AFB回路適用時のノイズフィルタの広帯域にわたる安定性と減衰特性の評価を可能とする。これにより,AFB回路適用時の減衰量,安定性,体積,損失を考慮したノイズフィルタの最適設計法を確立する。本研究で得られた知見は,電力変換器のスイッチングリプル抑制素子の小型化にも寄与することが期待できる。
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研究実績の概要 |
当該年度においては、コモンモードノイズの検出および補償のために、大型のコモンモードトランスを必要としないハイブリッドEMIフィルタの設計法の確立および試作をおこなった。まず、検討周波数帯域である150 kHzから30 MHzにおいて、必要減衰量を満たす最小体積のコモンモードインダクタとYコンデンサを備えた受動フィルタの設計について検討した。次に、受動フィルタの減衰量を所望のレベルに増加させるアクティブフィードバック回路の設計法を検討した。上記の2つの設計法を組み合わせることで、ハイブリッドEMIフィルタの設計法を確立した。検討の結果、受動フィルタを2段のCLCL構成とし、前段の受動フィルタが、コモンモードノイズを高速オペアンプが取り扱うことのできるレベルまで減衰することで、アクティブフィードバック回路を適切に駆動できることを明らかにした。 確立した設計法に従い試作したハイブリッドEMIフィルタを、三相PWMインバータ給電モータドライブシステムへ適用し、コモンモード電流の測定をおこなった。実験の結果、ハイブリッドEMIフィルタは、最小体積設計をおこなった受動フィルタに対して、受動部品のサイズと点数を変化させることなく、100 kHzから2 MHzの周波数帯域でコモンモード電流に対する減衰量を最大8.2 dB増加できることを確認した。当該年度の研究成果は、オープンアクセスジャーナルIEEE Accessに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度においては,当初の予定通り、コモンモードトランスレスハイブリッドEMIフィルタの設計法の確立および試作をおこなった。まず、必要減衰量を満たす最小体積のコモンモードインダクタを備えた受動フィルタの設計について検討した。なお、コモンモードインダクタの設計には、先行研究にて考案した広帯域シミュレーションモデルを活用した。次に、高速オペアンプによって構成するアクティブフィードバック回路の設計法を検討した。上記の2つの設計法を組み合わせ、コモンモードトランスレスハイブリッドEMIフィルタの設計法を確立した。また、設計法の確立について検討をおこなった結果、受動フィルタを2段のCLCL構成とし、前段の受動フィルタが、コモンモードノイズを高速オペアンプが取り扱うことのできるレベルまで減衰することで、アクティブフィードバック回路が適切に駆動し、そのメリットを十分に得られるという知見を得た。 確立した設計法に従い、試作したハイブリッドEMIフィルタを三相PWMインバータ給電モータドライブシステムへ適用し、インバータ入力側において、コモンモード電流の測定をおこなった。測定の結果、ハイブリッドEMIフィルタは、コモンモードインダクタとYコンデンサなどの受動素子のみで構成したフィルタに対して、部品サイズおよび点数を変化させることなく、100 kHzから2 MHzの周波数帯域でコモンモード電流に対する減衰量を最大8.2 dB増加できることを確認した。また、当該年度の研究成果は、オープンアクセスジャーナルIEEE Accessに投稿し、既に掲載されている。 これらの進捗状況を踏まえ、当初の計画以上に研究が進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は大きく以下2点である。 まず、鉄損を考慮したフィルタの設計法について検討をおこなう。現状、大学実験室において実験が可能な電力容量での使用を想定したフィルタを設計・試作している。しかし、大容量装置へ適用する場合、フィルタの損失を考慮した設計が重要となる。特に、コモンモードインダクタの鉄損特性を考慮したフィルタの最適設計法を確立する必要がある。このため、使用が想定されるナノクリスタルおよびMnZnフェライト材料の鉄損特性を実測し、その結果を現状のフィルタ設計法へフィードバックする。 次に、ディファレンシャルモードフィルタへのアクティブフィードバックの適用を試みる。電力変換器のスイッチング周波数近傍の低周波領域では、コモンモードノイズよりもディファレンシャルモードノイズが支配的となる。150 kHz以下の低周波帯域におけるノイズの新規格の導入により、低周波ノイズの抑制が大きな課題となっている。これまでの研究の成果として得られた知見を、ディファレンシャルモードフィルタへと適用し、フィルタの大幅な小型・軽量化の達成を目指す。
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