研究課題/領域番号 |
23K13317
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
國岡 春乃 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 助教 (10965916)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 環境低負荷型熱電池 / 温室効果ガス削減技術 / 熱電発電 |
研究開始時の研究の概要 |
Society5.0では大量のセンサーを必要とし、化学電池がその電源を担う。しかし、その電源である化学電池は欧州委員会の取り決めにより将来回収が義務付けられ、LiやNi等が規制の対象となるため、代替電池の開発が求められている。本研究では、循環型社会に対応する環境低負荷な熱電池を開発するため、完全無毒・地殻埋蔵量の豊富な構成元素からなり、工業化に適した溶融合成プロセスを用いて作製したα-SrSi2において、2W以上の発電を可能とする熱電池の開発に挑戦する。この熱電池を開発することで、半永久的に使用可能で循環型社会に対応する自立型電源を提供でき、Society5.0の可能性が広がる。
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研究実績の概要 |
Society5.0では大量のセンサーを必要とし、化学電池がその電源を担う。しかし、その電源である化学電池は欧州委員会の取り決めにより将来回収が義務付けられ、LiやNi等が規制の対象となるため、代替電池の開発が求められている。本研究では、循環型社会に対応する環境低負荷な熱電池を開発するため、完全無毒・地殻埋蔵量の豊富な構成元素からなり、工業化に適した溶融合成プロセスを用いて作製したSrSi2において、2 W以上の発電を可能とする熱電池の開発に挑戦する。具体的には熱電池において発電能力を示すPFが室温から473 Kの低温度域で2.6 mW/mK2以上になるようSrSi2における育成手法の探索及びドーピングをおこなった。 その結果、熱電池材料である単相のSrSi2を垂直ブリッジマン溶融合成法で作製することに成功し、発電能力を示す電力因子は2.9 mW/mK2を示した。キャリア濃度の温度依存性から活性化エネルギーを求めたところ、48 meVとこれまでで最も大きな値を示した。この数値を元に第一原理計算の計算条件を見直し、実験値のゼーベック係数を再現できた。第一原理計算を用いて不純物置換を行った際にどういった元素が安定か13族において調べたところ、Gaが最も安定で、Inが最も不安定であることが明らかとなり、それを実験的に検証した。その結果、計算結果と同様の傾向を示し、Gaは1 at/%までSrSi2にドープできたが、Inはドープできなかった。また、Gaではホールドープできていたものの、ドープしたことによりギャップが潰れてしまい、金属的な挙動を示し、電力因子が低下してしまったことから、ドープのみでこの材料の電力因子を向上させることが難しいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
取り組み内容:SrSi2でp型の発電能力を増強するp型不純物の探索を今年度中に終える予定であったが、この取り組みを引き続き次年度も行う必要がでてきた。 理由としては、SrSi2へのGaドーピングには成功し、キャリア濃度は増加したものの、Gaドープによってバンドギャップが潰れてしまい、ドープしていない場合と比べて性能が低下する結果となった。そのため引き続きp型の発電能力を増強するp型不純物を探索するとともに、等電子不純物を添加してバンドギャップ値の拡大を狙う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
目標値であるPF値2.6 mW/mK2をドープしていないSrSi2で室温にて達成しており、今後の見通しは明るい。しかしながら、350K以上ではドープしていないSrSi2も2.6 mW/mK2より電力因子が下回ってしまうこと、バンドギャップが小さいためにドープをするとバンドギャップが潰れ金属的な特性を示し、PFが低下してしまうことから、バンドギャップを拡張できるようなドーパント候補を模索し、実際に添加していく必要がある。そこで、初年度に終える予定だった、SrSi2にドープする最適な添加元素を引き続き探索する。 また、それと同時にSrSi2に金属の電極形成を行う。電力を効率よく取り出す取り組みとして金属電極をSrSi2に形成する必要があるが、この電極形成を現状最も高い特性が得られているドープしていないSrSi2に対してスパッタ法を用いて行う。その電極形成をおこなった素子に対して電極とSrSi2の界面評価を行い、接触抵抗が1.0 x 10-9 Ωm2以下となる金属電極を探索する。
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