研究課題/領域番号 |
23K13331
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 裕之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 助教 (90878357)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 同期現象 / IoT / 結合振動子系 / 自律分散 / 無線通信 / 結合振動子 |
研究開始時の研究の概要 |
IoT技術の普及に伴い、無数の小型デバイスによる情報伝達を想定した高効率な通信方式が求められている。このとき、一つの通信チャネルを複数デバイスが同時に利用すると干渉や衝突が発生するため、各デバイスが省電力かつ自律分散的に適切な通信タイミングを決定する必要がある。一方、蛍の明滅同期や蛙の交互発声など、自然界で見られる生物間の協調動作による同期現象が数理モデル化され、近年自律分散型通信などに応用されている。本研究では、この同期数理モデルに省電力動作を想定した改良を加えることで新たなモデルを構築し、多数デバイスが省電力かつ自律分散で実現できるスケジューリング技術の開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,複数のIoT通信端末間における省電力自律分散型スケジューリング技術の実現である.目的達成のために,自律分散で同期可能な数理モデルである結合振動子モデルを導入し,IoT端末の省電力通信を想定した修正を加えたモデルを提案している.そのため,提案モデルが実際のIoT環境を想定した多端末環境や動的環境で有効かどうかを検証する必要がある. 本年度は,提案モデルの数値実験および実機実装による検証を開始した.10台前後の比較的少数の端末の場合,数値実験と実機実験の両方で提案モデルによる同期達成が可能であることを確認した.このとき,ネットワークに参加する端末台数が変動する動的環境においても,環境変動に応じてモデル間の同期状態が変わり,再び同期状態に復帰することを確認した.一方,多端末環境を想定した数値実験では,同期状態までの時間や安定性など,同期性能が低下することを確認した.これは,特に動的環境においては,系が同期状態に安定しなくなる原因となる. そこで,当初2年目以降に実施予定であった計画を先行し,同期性能向上に向けた検討を行った.従来用いられてきた正弦関数に基づく結合関数を他の関数に置き換え,通信応用に有利となるよう相互作用項を調整することを検討した.数種類の結合関数について同期時間や同期安定性を評価し,結合関数として線形関数や余弦関数に基づく関数を用いた場合に同期性能が向上することを確認した.さらに,結合関数の複数のパラメータを調整することで,さらなる性能向上の可能性があることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画に基づき手法の性能検証を進めた結果,実機や多数端末を想定した環境における性能低下が重要な課題であることが明らかになった.そのため,当初計画では2年度目以降にモデルの性能向上について検討を開始する予定であった,モデルの性能向上について計画を前倒しして検討を開始した.結果として,新たな性能向上手法を提案し,数値実験により実際に性能向上が可能であることを示すことができた.性能向上の実現は,当初3年度目を計画していたため,かなり先行して成果が得られている. 一方,実機を用いた実験については,実機デバイスの導入が遅れており,多端末に実装するための環境整備も遅れている状況である. 以上のことから,当初計画から遂行順序が前後した部分もあるが,全体として概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
提案した同期手法および今年度検討を行った性能向上手法について,動的な環境や干渉源が存在するなど,より実環境に近い状況を想定した数値実験を実施し,実機での有効性を検討する.一方で,提案手法が用いる数理モデルの解析方法や他の数理モデルとの組み合わせなど,新たな展開についても検討を開始する.また,当初初年度に計画していた実験用実機端末の比較検討および実装方法の検討を行う.
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