研究課題/領域番号 |
23K13360
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 由斉 東北大学, 工学研究科, 助教 (30907043)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 化学センサ / 液体センサ / 酸化物半導体 / ナノワイヤ / PN接合 / 複素インピーダンス解析 / イオンセンサ / センサ / 界面準位 |
研究開始時の研究の概要 |
PN接合を有する酸化物半導体ナノワイヤはその接合界面準位への分子吸着性能に優れているため、化学センサとして期待される材料である。しかしPN接合形成時に意図しない欠陥準位が生じる問題があり、化学センサの性能向上に向けて解決すべき課題である。本研究は酸化物半導体ナノワイヤとPN接合の同時形成による界面準位制御を利用して革新的な化学センサを作製する。さらに界面準位密度とセンサ特性との相関を調査して、分子検出メカニズムを解明することと分子濃度を定量識別することを目的とする。それにより酸化物半導体ナノワイヤを用いた化学センサの感度や識別性能の向上に向けた設計指針が得られるものと期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、PN接合を有する酸化物半導体ナノワイヤの界面準位を制御することにより、分子を高感度に定量識別する化学センサの開発を目的としている。2023年度の研究実施計画は、酸化物半導体ナノワイヤとPN接合の同時形成技術の開発とそれを用いた液体センサ特性の評価方法の立ち上げを予定していた。2023年度の具体的な研究成果を以下に記載する。 (1) 酸化物半導体ナノワイヤとPN接合の同時形成技術の開発:酸化チタン薄膜/銅薄膜/シリコン基板構造のサンプルを加熱することにより、原子拡散現象を利用してナノワイヤを作製した。X線測定と複素インピーダンス測定により解析したところ、そのナノワイヤ元素成分は酸化銅であり、ナノワイヤを含めたサンプル表面に酸化銅/酸化チタンPNナノ接合が広く分布することを明らかにした。以上のように、酸化物半導体ナノワイヤとPN接合の同時形成に成功した。 (2) 液体センサ特性の評価方法の立ち上げ:酸化銅もしくは酸化亜鉛ナノワイヤを用いた抵抗型化学センサを作製し、Na等のイオン液体のセンサ特性を直流電流電圧測定により評価した。Naイオン液体中のセンサ抵抗値は大気中の抵抗値と比べて、酸化銅センサでは減少、酸化亜鉛センサでは増加するなど、センサ特性が酸化物半導体材料やイオン種と濃度に依存することを見出した。 (3) PN接合を有するナノワイヤを用いたセンサ特性の評価:(1)で開発した技術を用いて酸化銅/酸化チタンPNナノ接合を有する酸化銅ナノワイヤセンサを作製し、アルコール液体分子の検知性能を評価した。複素インピーダンス解析により、PNナノ接合とアルコール液体分子との化学反応メカニズムを検討した。また直流電流電圧と複素インピーダンス測定より評価したセンサ特性を用いた多変量解析を行うことで、アルコール分子種の識別と濃度同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、酸化物半導体ナノワイヤとPN接合を用いた化学センサの開発を目的とする。2023年度の研究計画は、PN接合ナノワイヤの作製技術の開発と評価、直流電流電圧測定による液体分子のセンサ特性評価方法の立ち上げ、であった。 これまでの研究成果は以下の通りである。(1) 酸化チタン薄膜/銅薄膜/シリコン基板構造のサンプルを加熱することにより生じる原子拡散現象を利用することで、酸化銅ナノワイヤと酸化チタン/酸化銅PNナノ接合の同時形成に成功した。(2) 直流電流電圧測定により、酸化銅もしくは酸化亜鉛ナノワイヤセンサのNa等のイオン液体分子のセンサ特性を評価した。酸化物半導体材料やイオン液体種とその濃度と、センサ特性との相関を明らかにした。本研究成果は国際学会(IEEE Sensors 2023、2023年10月)および学術誌(IEEE Sensors Letters, 2023, 7, 2001404)にて報告した。(3) 複素インピーダンス解析により、酸化銅/酸化チタンPNナノ接合を有する酸化銅ナノワイヤセンサがアルコール液体分子を検知するメカニズムを検討した。さらに、直流電流電圧と複素インピーダンス測定により評価したセンサ特性を用いた多変量解析を実施し、アルコール液体分子の識別および濃度同定に成功した。本研究成果は学術誌(Langmuir, 2024, 40, 1079)にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に開発した酸化物半導体ナノワイヤとPNナノ接合の同時形成技術を様々な種類の酸化物半導体に適用し、その化学センサを作製する。まず、ナノワイヤとPNナノ接合を有するサンプルにおいて、大気中での界面準位を定量解析する手法を確立する。その後、そのセンサを液体中に浸した際においても同様に界面準位を解析し、大気中との違いを基にして分子検知メカニズムを解明する。また酸化物半導体材料などのセンサ構造と感度などのセンサ特性との相関を利用して多変量解析を行い、分子の定量的な識別を試みる。さらに、イオンなどの液体分子に加えて、エタノール等の気体分子の測定システムを構築し、PNナノ接合を有する酸化物半導体ナノワイヤセンサの気体センサ応用展開を実施する。
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