研究課題/領域番号 |
23K13369
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
関 裕平 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (70937367)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ダイヤモンド / パワーデバイス / 半導体 / イオン注入 / 不純物ドーピング |
研究開始時の研究の概要 |
ダイヤモンド半導体は、次世代のパワーデバイス半導体材料として期待され、これまで50年以上世界で精力的に研究されているがいまだに実現に至っていない。理由の一つとしてイオン注入での不純物ドーピングによるp型、n型の電気伝導制御ができていないことが挙げられる。 本研究では、イオン注入したダイヤモンド中の結晶欠陥や注入した不純物の化学的結合状態を詳細に調べ、電気的活性化を阻害する原因とその改善方法を明らかにし、イオン注入によるダイヤモンド半導体へのドーパントドーピング技術を確立させる。
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研究実績の概要 |
ダイヤモンド半導体は次世代のパワーデバイス半導体材料として期待されているが、いまだ実用化には至っていない。その理由の一つとしてイオン注入での不純物ドーピングによるp型、n型電気伝導制御ができていないことが挙げられる。イオン注入法は加速されたイオンを試料に対して打ち込むため、試料内に空孔や格子間原子を生成する。シリコン等の半導体材料の場合、ポスト熱処理によってそれらの欠陥の除去と不純物原子の置換を行うが、ダイヤモンド半導体の場合、熱処理によって照射部分のグラファイト化が起こりやすく、さらに結晶構造の緻密さから不純物の置換が起こりにくい。本研究ではイオン注入したダイヤモンドの結晶状態や注入した不純物の科学的な結合状態を調べ、電気的活性化を阻害する原因を明らかにし、イオン注入によるダイヤモンド半導体への不純物ドーピング技術確立を目指している。 当該年度はホモエピタキシャル成長とヘテロエピタキシャル成長の異なる成長方法で合成された、Nをほとんど含まない高純度なダイヤモンド基板へ低濃度のBイオン注入を行った。この結果、どちらの成長によって合成されたダイヤモンドでも10^17 cm^-3の低いB濃度でp型の電気伝導を得ることができた。また、ホモエピタキシャル成長ダイヤモンドにおいては680 cm^2/Vsの非常に高いHall移動度が得られた。これはBイオン注入で作製されたp型ダイヤモンドにおいて、最も高い値である。イオン注入による10^18 cm^-3より低いB濃度のp型ダイヤモンドの形成は、イオン注入由来の欠陥や置換率の低さから、これまで報告されていなかった。しかし今回の結果から、ダイヤモンドへの低濃度のB注入においては母材の結晶品質が非常に重要であることがわかった。これらの結果については第84回応用物理学会秋季学術講演会及び第71回応用物理学会春季学術講演会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はイオン注入により形成される結晶欠陥に着目し、Bイオン注入で形成されたp型ダイヤモンドの活性化効率の向上を目指した。結果として10^17 cm^-3以下のB濃度でのp型伝導層の形成とイオン注入由来の欠陥による補償の影響が確認できたため、これは達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は高品質なダイヤモンド基板に対し低濃度のBイオンを注入し、p型伝導層を作製し、基板の結晶性や、イオン注入によって生成される結晶欠陥が、イオン注入したダイヤモンドの電気特性に与える影響を調べることで、母材の結晶性の重要性や低濃度イオン注入の限界について確認できた。今後はイオン注入がより必要とされる10^20 cm^-3を超える高濃度領域でのイオン注入由来の欠陥の影響を調べていく。特に高濃度に注入する場合、空孔や格子間原子が多量に生成され、結晶回復が困難になることが予想される。そこで、Hall測定などの電気特性評価に加え、Raman散乱スペクトルやPL測定等の光学測定やRBSチャネリング測定による結晶性の評価を行い、イオン注入やポストアニールの最適な条件の探索を行う。 また上記に並行して、これまでのBイオン注入の知見を活かし、イオン注入によるn型ダイヤモンド形成の研究も行っていく。注入するイオン種は主にPを予定している。Pイオン注入によるn型ダイヤモンドの形成は、Bイオン注入によるp型ダイヤモンドの形成に比べ非常に難しく、未だ成功例がない。Pイオン注入の場合、イオン注入後の結晶回復に加え、Pの格子位置への置換が非常に困難である。そこで次年度は電気特性評価に加えて、RBSチャネリング法による結晶性評価及びPの結晶中での位置の同定を行い、注入及びポストアニール条件の検討を行なっていく。
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