研究課題/領域番号 |
23K13400
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
高舘 祐貴 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (20848311)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 設計風速 / 設計用風荷重 / 風洞実験 / 数値流体解析 / POD解析 / 複素POD解析 / 低層建築物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、強風による被害が多い低層建築物等に対して周辺建築物等の障害物の影響を考慮した合理的な耐風設計手法を提案することである。現行の基規準では、建築物の立地条件に地表面粗度区分が考慮されるが、周辺建築物等による直接的な風荷重の増加・低減の影響は含まれていない。本研究では、風洞実験及び数値流体解析により、周辺建築物等の影響を風荷重評価に組み込んだ合理的な耐風設計手法を提案することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,強風被害が多く発生する低層建築物等の安全かつ合理的な耐風設計のために,周辺建築物等の障害物の影響を考慮した耐風設計手法を提案することである。 まず,これまでの研究成果を国際風工学会(ICWE)で発表し,情報収集を行った。これにより,本研究に必要なプロセスや海外での設計風速の考え方についての知見を得た。 地表面の風速性状の分析にあたっては,数値流体解析を用いて,多数のラフネスブロックを配置した時の風速性状を分析した。具体的には,多変量データの主成分解析の一種である固有直交関数展開によるPOD解析(Proper Orthogonal Decomposition)及び複素数の領域まで拡張した複素POD解析(Complex Proper Orthogonal Decomposition)を実施し,地表面付近の風速の変動性状を明らかにした。この結果を日本風工学会年次大会で発表し,複素POD解析では移流を伴う複雑な変動性状を1つの変動モードで表すことができることをアニメーションで示した。 主に風速分布に着目しているが,建築物の風による被害は建築物やその部材に作用する風圧によって発生することから,別課題で作製した高さを変化させることができる風圧測定模型を活用し,周辺建築物としてラフネスブロックを一様配置および千鳥配置したときに対象建築物に作用する風圧及び風力について検討し,配置密度が大きくなることで風荷重が徐々に低減することを定量的に示した。この結果の一部は国際会議(BBAA IX)で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,風洞実験及び数値流体解析による風速測定実験と風圧測定実験を実施した。 風洞実験では,実験に用いるための気流に関する詳細な検討を行い,大きさの異なる複数のスパイヤや多数のラフネスブロックの配置を検討して低層建築物等の風洞実験で用いるべき適切な実験気流を検討した。実験気流には従来のスパイヤ及びラフネスブロックを設置するだけでなく,風洞床面に人工芝を敷くことで理想的な変動成分を持つ気流が生成できることを確認した。この気流を用いて,風圧測定実験で異なる高さとアスペクト比を持つ正方形角柱に対して風圧の多点同時測定を実施した。周辺には高さが同じラフネスブロックを一様配置または千鳥配置とし,単体建築物のみの場合と周辺に障害物がある場合の建築物に作用する風圧及び風力性状の違いを検討した。風洞実験では風向の変化やブロックの位置の変更が容易であるため,これらを考慮した実験をさらに進める予定である。 数値流体解析では,ラフネスブロックを一様配置及び千鳥配置したときの地表面付近の風速を多点同時に取得し,POD解析および複素POD解析により風速性状を分析した。また,平均絶対誤差などを用いて解析手法の比較を行うことで,2つの解析手法の利点を探った。今後は,風圧も含めたモード解析による手法によって建築物周辺の気流や変動風圧の支配的なモードについて明らかにすることで設計風速の合理化ができるか検討を進める。 また,本課題とは別途実施した研究において,瓦屋根やスレート屋根,金属屋根の引き上げ試験によって荷重と耐力の関係の知見を得た。この成果は,研究計画の中で予定している建築物の外装材の破壊確率を算定する上で活用できるものとなり得ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに実施した周辺建築物の影響を考慮した風洞実験をさらに進めることで,周辺建築物が建築物の風圧および風力に与える影響についてのデータを蓄積する。これまで,熱線風速計で建築物周辺の主流方向の風速を測定していることから,この結果と風圧測定実験のデータを活用することで,地表面付近の風速とそれに伴う風圧の関係を明らかにする。 次年度は風洞実験を模擬した数値流体解析について,本年度までに実施していない複数の条件における検討を進める。さらに,対象建築物周辺の建築物がランダムに配置された時の風速や風圧の性状について,これまで実施した一様配置や千鳥配置といった高さや配置密度が一定となる条件とどのくらい対応するか明らかにするための風洞実験を実施することも目標とする。このような実験の実施にあたっては,ランダム配置での配置の再現性が課題となる。これに対処するため,対象とする周辺模型をランダム配置としたCADデータを作成し,3Dプリンタで同様の模型を作製する。これによって,配置の再現性を表現できるだけでなく,風洞実験と数値流体解析での周辺建築物の配置条件を同じものとすることができるため,その実験技術の確立を目標とする。そして,これまでの検討で一様配置による風洞実験で概ね定量化されている気流の乱れと突風率の関係式があるため,この関係式がランダム配置でも適用可能かを検討し,適用範囲の明確化または関係式の一般化を目指す。さらに,これまでに実施したPOD解析および複素POD解析により,模型の配置による変動風速の組織的な構造や主要モードの変化を明らかにすることで,地表面の風速および風荷重が増加または低減する条件を明示することを目指す。
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