研究課題/領域番号 |
23K13408
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松葉 義直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (90975351)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 長周期波 / 波浪推算 / 沿岸波浪 / 遡上 / 沿岸防災 |
研究開始時の研究の概要 |
沿岸で発達する長周期波は、高波浪時の浸水被害や海岸地形変化に大きく影響を与えることが知られており、その効率的な予測技術の構築が求められている。一方、現状の数値モデルでは沖から入射する自由長周期波が考慮されておらず、過小評価を招いている可能性がある。本研究では、我が国独自の貴重な長期波浪観測データの分析をもとに既存の数値モデルのさらなる開発・発展を進める。最終的には、遠方から伝播する自由長周期波を考慮した沿岸波浪予測手法の構築とその適用をすすめ、高波被害予測手法の高度化に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究は、沖合から沿岸部に来襲する自由長周期波に焦点を当て、その自由長周期波の予測手法の開発とさらに沿岸波浪への影響を明らかにすることが目的である。 本年度は特に北海道南東沿岸部の長期波浪観測データをもとに分析を行った。長期波浪観測の結果からは、沿岸部の長周期波の波向きは入射短周期波、とくにうねり成分の波向きに強く影響を受けることが明らかになった。特に入射波の波向きによっては、沿岸方向に伝播する自由長周期波が存在することが観測データより明らかになった。さらに、広い計算領域をもちいた位相解像モデルにより計算を行うことで、台風来襲時に観測された長周期波の再現を行った。この計算結果からは、沖合に開けた海岸では自由長周期波の影響は浅海域では沿岸部で発達する拘束長周期波と比べて小さいことが明らかになった一方、漁港内部などの湾内振動に対しては無視できないことが明らかになった。 また、位相平均モデルを用いた数値再現のテストも茨城県鹿嶋において行った。この計算では陸側境界部で入射長周期波の反射波に相当する成分を与えてやることで自由長周期波の再現を目指すものであり、入射長周期波については既存の弱非線形理論に基づいた方向スペクトルを与え、反射方向については境界部での鏡面反射を仮定している。このケースでは、自由長周期波の大きさについては比較的よい精度で再現された一方、浅海域での発達・減衰を経験的に導入しただけのモデルでは波向きが良好に再現できないことが明らかになった。 また、複数海岸でLiDARを用いた沿岸波浪の観測を行った。これらをさらに分析して自由長周期波の特性を明らかにし、さらにモデルの検証にもこれらデータを用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目においては自由長周期波の波浪特性を明らかにしたうえで、そのモデル化を進めることが目的であった。これまでは波浪特性の分析が進んでおり確かな成果を得ている。加えて、モデル化の部分においても複数地点で着手できていることから、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにモデル化の部分を具体的に進めていく予定である。 一年目の位相解像モデルを用いた計算結果からは、防波堤や護岸前面の水深の比較的大きい地点での入射長周期波の反射率が過大評価されていることが示唆されている。この一年目に得られた知見をもとに、沿岸域での水深の違いによる長周期波の発達・減衰の違いを考慮した数値モデルを構築する。 さらにそれらモデルから再現された広域での自由長周期波について、入射短周期波との重合も含めて、遡上や地形変化への影響を位相解像モデルを用いて分析することとする。
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