研究課題/領域番号 |
23K13409
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中村 亮太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90805938)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 擬似温暖化実験手法 / 全球モデル / 高潮 / 河川洪水 / 浜崖 / 沿岸災害 / 熱帯低気圧 / 温帯低気圧 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,温暖化後の極端大気現象の熱力学的整合性の検証を踏まえた後,擬似温暖化手法を低頻度高強度な極端大気現象と沿岸災害に適用して,その変容を統計的に解釈する.最初に,領域気象モデルと非構造格子海洋流動モデルを用いて極端大気現象と高潮・高波の数値計算を行う.数値計算結果は観測値と比較・検証する.そして,擬似温暖化手法を適用して,極端大気現象と高潮・高波の温暖化影響評価を実施する.
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研究実績の概要 |
今年度は全球モデルや領域気象モデルを用いた温暖化後を想定した北極海における海氷分布の研究,アメリカ合衆国における高潮の研究,我国信濃川水系における河川洪水の研究を主として行った。また,今後の深刻な海岸侵食としての浜崖の基礎的な形成メカニズムを評価した。 全球モデルを用いた海洋流動・波浪・海氷の温暖化影響評価の研究は,オープンソース全球大気循環モデルCESM2を用いて実施した。ここでは,海面に作用する気象境界条件に現在気候と温暖化後の差分を加えた.このように擬似温暖化手法を模擬した温暖化場を形成することで,海洋循環・波浪・海氷結合全球モデルを用いた温暖化影響評価を行った。温暖化後には,温暖化後の海氷面積に近い結果が得られた。本研究成果は和文に結実しているが,今後数値計算結果の妥当性を踏まえて,より詳細に結果を吟味する必要があると考えている。 2022年ハリケーンIANによるアメリカ合衆国フロリダ州における高潮の温暖化影響評価を実施した。SSP5-8.5シナリオを想定すると現在気候条件よりも高潮の強度が強まる傾向が算定された。これらは,研究代表者や他の研究者による既往研究成果とも整合しており,本研究成果は妥当な結果であると考えている。この研究成果は,AGU Fall meeting 2023で発表している。 信濃川水系における河川災害に擬似温暖化手法を適用した。結果として,温暖化後には河川災害の強度が増加することが数値計算の結果として確認できた。この研究成果もAGU Fall meeting 2023で発表している。 最後に,新潟海岸における海岸侵食としての浜崖の基礎的なメカニズムの解明を数値計算モデルを組み合わせることで行った。離岸堤背後の海面水位の上昇が浜崖形成に大きく影響することを示した.本研究成果は英文論文として結実している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は,世界各地において擬似温暖化実験手法を用いた沿岸災害の温暖化影響評価を行うものである。初年度には北極海での海洋流動・波浪・海氷の適用事例やアメリカ合衆国における高潮災害の事例に適用した。北極海周辺海域における海洋流動・波浪・海氷の温暖化影響評価の研究では,全球モデルに擬似温暖化手法の構成を適用するという新しい試みを行った。この数値計算結果は,その妥当性を含めてより吟味する必要があるものの,今後の研究展開に期待できる。また,アメリカ合衆国における高潮災害の温暖化影響評価の研究は,研究代表者のこれまでの研究成果と同様のアンサンブル平均を考慮した擬似温暖化手法を用いている。そして,温暖化のシナリオをCMIP6に更新しており,研究対象場所としてアメリカ合衆国を選択した。このように,世界各地の沿岸災害の温暖化後の評価を実施可能な手法を構築しており,世界各地の高潮の学術的な知見を蓄積している。 我が国で発生した河川流域災害や,海岸域における深刻な海岸侵食としての浜崖の形成メカニズムに関する数値計算モデルを用いた研究成果も得ることができた。河川流域災害の研究では,衛星データや観測ネットワークを活用することで,数値計算モデルの精度を検証し,擬似温暖化手法を適用することで将来に想定される河川災害の強度と規模を評価した。新潟海岸で発生した浜崖の研究では,最初に基礎的な海岸侵食のメカニズムを数値計算モデルを用いて評価することで,今後の温暖化後を想定した数値計算に接続したいと考えている。 本研究成果では,研究申請の段階では,世界各地の高潮等の沿岸災害を取り扱う予定であったが,河川流域災害や海岸侵食についても数値計算モデルを用いて評価した。このように研究成果の量が充実してきており,その幅も広がっていることから当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針としては,世界各地における擬似温暖化手法の沿岸災害を含む水災害への適用事例を増加させることを目的とする。沿岸災害のケースとしては,高潮の研究のみならず,新潟海岸における海岸侵食や北極海周辺域における海氷面積の増減等の地域の課題に適した数値計算手法を開発して,擬似温暖化手法を適用する研究を継続する予定である。また,現在他国の適用事例としは,イラン国や南アメリカ大陸周辺域における適用事例を検討中である。 また,水災害としての河川洪水による河口周辺域への影響など,温暖化による環境変動が与える物理環境場の変化の研究を擬似温暖化手法を主として用いて実施する。このようにして,沿岸域における水災害の擬似温暖化手法の適用事例を増やして,基礎的な理解を増進することを目的とする。 最後に,高潮等の沿岸災害を引き起こす熱帯低気圧等の温暖化後における熱力学的な変化も,擬似温暖化手法を用いて評価する。このようにすることで,温暖化後の極端気象災害の基礎的な物理変化を考慮した沿岸域における擬似温暖化手法の適用を実施することを今後の方針とする。
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