研究課題/領域番号 |
23K13430
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 智宏 京都大学, 工学研究科, 助教 (90824293)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | レジオネラ / 給水システム / 再増殖 / 日和見感染菌 / 滞留水 / 自由生活性アメーバ / 微生物群集解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、水道の給水末端では水の滞留傾向が強まっており、残留塩素が消失することでレジオネラ属菌の再増殖が懸念される。レジオネラは自由生活性アメーバをはじめとする他の微生物群集と密接に関わり合いながら増殖するため、レジオネラ再増殖をサポートするような生物叢を給水管内に形成させないことが重要となる。本研究は、給水システムにおけるレジオネラの再増殖に対して自由生活性アメーバや細菌群集構造が果たす役割を実態調査や室内実験を通して明らかにし、レジオネラの制御に有用な知見を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
高層ビルや病院といった大規模建造物における使用頻度の低い給水栓では、水の滞留によって残留塩素濃度が低下・消失し、病原微生物が再増殖することがある。レジオネラ属菌はこのような給水末端で重要な日和見感染菌(免疫機能の低い人々に対して病原性を示す細菌)であり、水道システムを介した感染事例が海外では報告されている。人口減少に伴って水需要が減少していく中、水の滞留傾向は今後も強まると考えられ、 給水末端でのレジオネラ制御手法の構築が急務である。本研究は、レジオネラの宿主となる自由生活性アメーバや共存する細菌群集が果たす役割も踏まえながらレジオネラ再増殖につながる環境条件を整理し、有効な対策を提案することを目的としている。 初年度となる2023年度は、ある建物給水システムにおいてレジオネラ汚染の実態調査を行った。あらかじめレジオネラ汚染が確認されている給水栓を対象に、滞留時間を段階的に減少させながら滞留水を放水し、水質分析を行った。その結果、1ヶ月間滞留させた給水栓における初流水では3-5 log CFU/Lと高濃度のレジオネラ属菌が検出された。検出されたレジオネラのシーケンス解析によってLegionella anisaとLegionella feeleiiが同定された。滞留期間を7日まで短縮するにつれてレジオネラ濃度は減少傾向にあったが、さらに滞留期間を4日、2日まで短縮しても有意な濃度減少は見られなかった。アメーバ濃度の測定と細菌群集解析を行ったところ、滞留期間を短縮することでアメーバ検出率の低下、細菌叢の多様性の低下が見られ、レジオネラの再増殖に影響を及ぼしている可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、給水システムにおける滞留水でのレジオネラや共存微生物の再増殖の実態を明らかにできたため、概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の2点について取り組む予定である。 1点目としては、まず初年度と同様の建物給水システムを対象として継続調査を行う。具体的にはフラッシング洗浄(給水栓を全開し、最大流量で長時間放水し続けることで給水管内部の洗浄効果を期待する手法)に着目し、レジオネラ対策の観点から洗浄効果の持続性について検討する。 2点目としては、生物膜中に存在するレジオネラの再増殖に対する滞留条件の影響を評価する。滞留給水栓におけるレジオネラは、実際には多くが給水管内部の生物膜に存在している可能性が高い。上記の調査では滞留水のサンプルは得られるものの、給水管内面の生物膜の採取が難しい。そこで本研究では給水管材質の試験片を用いた室内実験を行い、まず試験片上にレジオネラを含む生物膜を再現する。その後、残留塩素を含んだ水道水を異なる頻度で流すことで、塩素接触による生物膜内部のレジオネラ不活化効果について検討する。
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