研究課題/領域番号 |
23K13448
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
赤星 拓哉 崇城大学, 工学部, 助教 (40848454)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 鋼構造 / 柱梁接合部 / 脆性破壊 / 延性き裂 / 破壊モード / 破壊靭性 / ワイブル応力 |
研究開始時の研究の概要 |
建築構造物にとって大地震時の脆性破壊発生を的確に予測することは重要であり、き裂が純曲げを受ける場合、例えばワイブル応力を使った評価が可能である。一方、破壊発生はき裂の変形状態(モード)の影響を強く受けることが指摘されている。大変形後、終局状態に至るまで高い塑性変形能力を期待される建築用鋼材では、複数のモードが作用する影響は無視できないが、そのような手法は開発されていない。本研究では、鋼構造建築物の柱梁接合部を対象とし、大変形後の破壊に対するモードの影響を加味した予測手法を策定する。
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研究実績の概要 |
本研究では、鋼構造柱梁接合部の溶接欠陥やスカラップ底などのひずみ集中領域から延性き裂が進展した後、脆性破壊に転化する危険性を的確に評価することを目的とする。 これまでの研究では、溶接欠陥を持つ柱梁接合部を模した試験体に対して脆性破壊実験を行い、ワイブル応力を用いた破壊予測を実施したが、精度にはばらつきが見られた。精度の低下は特に、せん断変形を受ける板厚貫通型の欠陥で顕著であった。スカラップ底から発生する破壊の予測においては、延性き裂が材軸に平行に入る試験体は高い塑性変形能力を示したものの、ワイブル応力を用いた破壊予測では早期に破断するという結果が得られ、実験値と予測値が大きく乖離した。これは、き裂先端の変形に開口型(モードI)だけでなく、面内せん断型(モードII)や面外せん断型(モードIII)が複合しており、破壊発生に影響することが原因と考えられる。 2023年度は、モードIとモードIIに着目し、混合割合を定量化する指標(混合モード比)を提案し、破壊予測精度にモードの違いが与える影響を検討した。混合モード比には因数として応力拡大係数を用いており、変形のごく初期の混合モード状態が破壊発生まで影響を及ぼすと仮定した指標である。その有効性と適用範囲を検討するため四点せん断試験による検証を行い、算出方法を確立した。前述の柱梁接合部試験体に対しても混合モード比の算出を行った結果、破壊予測の精度と混合モード比に一定の相関が見られることを明らかにした。更に、混合モード比を用いた補正式を提案し、モードの影響を考慮することで脆性破壊の予測精度が向上することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り材料試験を行い解析に必要となる材料特性を算出し、破壊靭性試験によるワイブル形状係数および破壊靭性値の算定を行った。加えて四点せん断試験の一部を実施し、解析との整合を確認した。しかし、混合モード状態で脆性破壊を再現するために極低温で破壊靭性試験を行った結果、十分な延性き裂進展量が得られず、ワイブル形状係数が収束しない結果となった。一方で四点せん断試験に関しては、想定を超える靭性を示し、設定した試験荷重で破断に至らなかった。一部の四点せん断試験を2024年に実施することは初期の計画の通りだが、異なる複数の混合モード下での脆性破壊を再現するには試験方法の見直しが必要である。 パラメータスタディによって混合モード比に影響する因子を把握し、有限要素解析から混合モード比を算出する手法はほぼ確立したため、先行して実施していた柱梁接合部の脆性破壊実験に対する解析を試み、多数のデータを得た。混合モード比と既往のワイブル応力法による破壊予測精度に一定の相関が見られたことから、混合モード比を用いた補正式を策定した。 破壊靭性試験および四点せん断試験は予定と異なる結果となり、今後の実施には修正が必要なものの、実験実施状況はほぼ計画通りである。一方で解析による破壊予測に関しては、過去の実験結果を用いて多数のデータが得られ、当初予定を前倒しして破壊予測の補正式を提案できた。総合して、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実施した四点せん断試験では脆性破壊が発生しなかった。しかし、わずかでも延性き裂が進展していれば、き裂進展方向の分析は可能である。実施済みの試験片をカットし破面観察を行うことでき裂の進展方向が明らかとなれば、解析上の設定が妥当であったかを確認することができる。その後、脆性破壊が発生するよう載荷位置等検討の上、改めて残りの四点せん断試験を実施し、補正式の妥当性を検証する。2023年度の実験ではワイブル形状係数が定まらなかったため、再度材料を準備し破壊靭性試験の実施も試みる。 混合モード比を用いた補正に関しては一定の精度向上が見られた。モードIとIIの混合状態を加味する手法として混合モード比の有効性が明らかとなったが、実験時の破断状況を見ると、溶接欠陥の変形にはモードIIIも見られる。モードI・IIの混合モード比と同様にモードIIIの影響も加味することができるのか、検証を進める予定である。
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