研究課題/領域番号 |
23K13451
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福井 一真 神戸大学, 工学研究科, 助教 (00908767)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 多孔質建築材料 / 凍害 / 凍結融解 / 熱水分同時移動 / Entrapped air / 毛管飽和 / ガンマ線減衰法 / 吸水試験 / 実環境 / 劣化リスク / 耐久性予測 |
研究開始時の研究の概要 |
建築材料の凍害は材料内に浸入した水分が凍結融解を起こすことで生じる劣化であり、建築物の耐久性を脅かす主要な要因の1つである。建築物は様々な物性値の材料や壁体構成からなり、曝される環境条件も様々である。そのため、実際の建物の劣化リスクを評価するためにはこれらの条件への汎用性が高い数値解析手法が有効となる。本研究では材料の凍害リスクが著しく増加する飽和に近い超高含水率領域に着目した壁体内の熱水分移動の解析モデルを構築することで、建築物の凍害リスクを予測する手法を提案することを目指す。
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研究実績の概要 |
凍害は多孔質建築材料内の水分が凍結と融解を繰り返すことで生じる劣化であり、建物の長寿命化の観点から抑制が求められている。本研究の目的は、建築材料の凍害リスクが増加する毛管飽和を超えた超高含水率領域での含水率変化と凍結融解を予測する物理モデルを構築することで、建築物の凍害リスクを評価する手法を提案することである。まず、(a)毛管飽和を超えた超高含水率領域における材料の含水率の長期的な変化と、(b)その領域において材料内に存在する水分の凍結性状をそれぞれ明らかにする。次に、(c)得られた知見を統合して超高含水率領域を考慮した凍結融解過程を含む熱水分同時移動モデルの構築を行い、(d)このモデルを用いて実際の環境条件や壁体構成を考慮した数値解析を行う。 2023年度に得られた主な成果について以下にまとめる。まず、(a)に関連して、ガンマ線減衰法を用いた吸水実験と実験を再現する材料内の液水・空気移動解析により、高含水率領域において細孔内に残存する空気の圧力変化と材料内の水分移動の相互作用を明らかにした。また、(b)と(c)に関連して、毛管飽和を超えた材料を用いた凍結実験とそれに対応する熱水分同時移動解析を行い、凍結融解時に生じるcryosuctionによる材料内の水分移動・蓄積の性状を明らかにした。 これらの成果はいまだ明らかにされていない飽和に近い高含水率領域における多孔質建築材料内の水分の移動や相変化性状を解き明かすものであり、飽和付近での含水率変動が強い影響を及ぼす材料の劣化リスク評価に寄与するものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は高含水率領域に着目し、(a)多孔質建築材料の長期的な含水率変化と、(b)材料内の水分の凍結性状の2点の検討を予定していた。(a)については順調に実験・数値解析を進めており、当初の予定通り2024年度前半に完了する予定である。(b)については外部機関での機器利用をしている関係で十分なデータ数を取得できなかったため、2024年度に追加の測定を予定している。一方、2024年度後半に実施予定であった(c)高含水率領域における材料の吸水・凍結過程のモデル化に向けた実験と数値解析を既に開始し、得られた成果を学術誌で発表した。また、今後行う数値解析に必要な材料の物性値や吸水性状に関するデータの取得が当初の計画以上に順調に進んでいることから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度中には一部の計画について実施時期の前後があったものの、今後も当初の計画から大幅な変更なく研究を進める予定である。 まず、2023年度に引き続き(a)超高含水率領域に着目した材料の長期的な含水率変化の検討を行うとともに、2023年度中に完了できなかった(b)材料内の水分の凍結速度に関する追加データの取得を行う。2023年度中に実験のノウハウを取得し、機器利用を行う外部機関での手続きを進めていることから問題なく研究を遂行できると考えている。 また、これらの検討で得られた知見を統合して超高含水率領域を考慮した凍結融解過程を含む熱水分同時移動モデルの構築や、実際の環境条件や壁体構成を考慮した数値解析を順次実施する予定である。
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