研究課題/領域番号 |
23K13485
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
岩本 一将 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (20850142)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オランダ人土木技師 / Politechnische School / 近代港湾都市 / 都市形成史 / 土木史 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の近代化において、国家戦略の観点から技術や資金が投入された近代港湾都市の形成過程を解明することは、都市形成史分野における重要な研究課題だといえる。本研究計画では、明治初期の内務省が関与する港湾事業に携わり、近代の港湾都市建設に大きな影響を与えたオランダ人土木技師の活躍に着目する。中でも、Politechnische Schoolで高等教育を受けた上で来日した複数名のオランダ人土木技師は、土木分野に加えて建築・都市分野についても修学していたと想定されている。日蘭の一次史料を分析して彼らが有していた専門知識を明らかにした上で、日本の近代港湾都市が築き上げられる過程を明らかにすることに取り組む。
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研究実績の概要 |
2023年度は、オランダ人土木技師のMulderが計画・設計に関与していた日本国内の事例であり、門司築港についての調査を実施した。調査対象となった門司港は、1889(明治22)年に特別輸出港として指定された近代港湾である。ただし、門司は近世以前に貿易機能を有していなかったため、近代に入って急速に整備が進んだ事例となる。オランダと日本の史料を収集して分析した結果、Mulder本人によるオランダ語の報告書を中心として、門司築港事業に関するオランダ人土木技師の貢献を明らかにすることができた。具体的な成果と進捗は以下の通りとなる。 Mulderは、門司築港において内務省の技師である古市らと共に潮流などを調査した上で築港計画を立ており、これは日本人技師にとっても欧州の技術や考え方を習得する機会となっていた。その上で、潮流の影響のない形状と範囲での埋め立てを計画し、旧市街地と接続する埋立地や運河、船溜まりの規模と配置など、都市内の運輸機能を向上させることのできるような設計を施していた。九州や東京の資本家が中心となって実施された築港事業と並行し、門司の地域住民は「市区設計」と称する街路整備事業を実施して、築港事業によって生み出された新市街地と連続的に接続した空間となっていたことを把握した。このように、門司の沿岸部(築港事業)と内陸部(市区設計事業)では異なる実施主体がそれぞれの意図と背景のもとで事業を実施し、結果としてそれが特徴として施設配置などに顕れた上で、近代港湾都市としての骨格が形成されたことが明らかとなった。 上記の成果に加えて、本年度はPolitechnische Schoolの講義内容などを調査するために、オランダでの史料収集も実施した。収集した史料は2024年度以降でも引き続き分析を行い、オランダ人土木技師らの修学内容などについての知見を得ることに務める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先行して取り組んでいた国内事例の史料調査において、門司築港に関する良質なデータを早期に得ることができたため、集中的に分析を進めた。その結果、研究実績の概要にて記述した成果を得ることができたため、日本建築学会計画系論文集へと投稿し、既に採択・公開されている。当初予定していたオランダ国内での資料調査も問題なく実施することができているため、当初の計画以上に進展していると評価した
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、オランダで収集した史料の分析を引き続き実施する。また、2024年7月に開催される国際学会IPHSで調査結果の一部を発表して議論を深め、追加の史料調査を行なった上で、論文投稿に向けて情報を精査する予定である。
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