| 研究課題/領域番号 |
23K13486
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| 研究種目 |
若手研究
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| 配分区分 | 基金 |
| 審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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| 研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小川 拓郎 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (00943614)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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| キーワード | 古代ローマ建築 / レーザースキャニング / ローマンコンクリート / ヴォールト / 型枠 |
| 研究開始時の研究の概要 |
古代ローマ建築において,円筒ヴォールト,交差ヴォールト,ドームなどを建造する際に,コンクリート打設のために組まれた木の型枠が躯体に転写することがあるが,こうした型枠はコンクリート養生後に取り去られるため現物は残らない。3D実測の分解能を上げていくことで,遺構そのものだけではなく,既に失われた型枠の形すら実測することは出来ないだろうか。本研究では,古代ローマ建造物の型枠の転写を対象に,申請者自身が既に確認しているポンペイ,ヘルクラネウム,オスティア,また,ローマではコロッセウム,ゴルディアーニの霊廟,アウレリアヌス城壁において失われた型枠の形の記録・分析を試みる。
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| 研究実績の概要 |
2024年度は、ローマ、オスティア、ポンペイ、ヘルクラネウムの各都市において現地でのレーザー実測調査を実施し、城壁・人工地盤・浴場といった、一般的にヴォールト架構によって支持される建造物を悉皆調査しつつ、ヴォールト架構の型枠の転写を特定・記録していった。ローマではサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂脇のアウレリアヌス城壁(ファルサロ通り)において、保存状態が極めて高く、かつ円筒ヴォールトの型枠建造技術に新規性のある情報をもたらす可能性のある遺構を実測した。この遺構では、型枠に使用された木型板の小口までモルタル(あるいはコンクリート)に転写されており、木材の幅・長さ・厚みを分析可能である。オスティアでは、マリーナ浴場においてスタッコ(漆喰)の押さえ板と思われる型枠の転写、また交差ヴォールトの躯体にうち残された屋根用の平瓦と丸瓦の組み合わせが確認され、交差ヴォールト建造時の型枠形成にかかる新規性のある痕跡を記録した。ポンペイでは、ヴォールトに転写された型枠は新たに確認できなかったものの、中央広場南東に位置するレギオIIIのインスラ3を囲む街区を実測し、ヴォールトと人工地盤に関わる連続した高低差を記録した。また、廊下の円筒ヴォールトに型板の転写が保存されている円形闘技場において、外壁と客席のレーザー実測を実施できたため、2025年度に継続調査として当該通路のレーザー実測調査を行える可能性がある。ヘルクラネウムでは、型枠の転写を保存する円筒ヴォールト群の上段(人工地盤によるテラス)を実測し、円筒ヴォールト頂部の厚みなどの基本情報を分析できるデータが得られた。 研究成果においては、建築分野を超えての成果発表に注力し、人文学分野や3D測量分野において、本研究の成果物を説明する上で専門的知見が必要な情報をVRなど視覚的に補うことで、高度な情報を簡潔に伝える方法の開拓に努めた。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
3: やや遅れている
理由
オスティアとヘラクラネウムでは、それぞれの都市遺構における型枠の情報をすべて記録したといってよい。ポンペイは舌状台地の外縁部がヴォールトによる人工地盤によって拡張されているが、これらの構造体は崩落の危険や修復下にあり調査許可が下りないことが多く、安定した情報収集が行えない現状にある。現時点では2023年度に収集したネクロポリス沿い人工地盤にみられる型枠の転写や、船乗りの家の円筒ヴォールトにみられる型枠の転写のレーザー実測データが得られており、これらを用いた暫定的な分析を進めるほかない。ローマはローマ市文化財監督局-九州大学間の包括的研究協定がアウレリアヌス城壁を保存対象としたものであるため、城壁の悉皆調査を継続しながら良好な型枠転写の記録を継続していく。2024年度に記録したサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂脇のファルサロ通りの型枠の基礎情報の取得と寸法・形状の分析が待たれる。これらはすべて円筒ヴォールトの型枠である。 交差ヴォールト、多角形ヴォールトあるいはドームの情報源として、ゴルディアーニの霊廟のレーザー実測調査、これを踏まえてのコロッセオの調査許可申請まで研究計画に組み込んでいたが、2025年4月時点でこの計画を見直す必要が出てきている。ゴルディアーニの霊廟の調査許可は2023年度時点で研究代表者に下りていたが、修復作業によってレーザー実測調査が延期され、その間にローマのサピエンツァ大学の調査が優先され、本研究代表者のイタリアにおける研究実績が当該大学の研究代表者に後れを取った形となった。ゴルディアーニの霊廟はローマ市文化財監督局の管轄であるが、コロッセオは国文化財監督局の管轄であり、調査許可を得るためには相応の研究実績をイタリアにおいて残す必要がある。この状況と、円筒ヴォールトのレーザー実測によるデータ収取状況とを照らし合わせた上で、やや遅れていると判断した。
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| 今後の研究の推進方策 |
ローマとポンペイにおいて新たなレーザー実測データの取得は継続しつつも、2024年度までに得られたデータの分析に注力し、異なる古代ローマ都市・異なる時期に見られる円筒ヴォールトに転写された木板型枠の寸法(幅、長さ、厚み)の失われた情報の復元、さらにはこれらの型枠による建造技術を体系立てて論文としてまとめる。ポンペイにおいては、円形闘技場における型枠の転写の情報を得るべく、2024年度のレーザー実測調査報告をまとめ、円形闘技場の更なるレーザー実測調査の申請を試みる。
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