研究課題/領域番号 |
23K13543
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
市川 公善 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 特任助教 (10829427)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | ダイヤモンド / 転位 / エピタキシャル成長 / 熱フィラメントCVD / 不純物ドープ |
研究開始時の研究の概要 |
ダイヤモンドは、パワーデバイスをはじめとし、多岐にわたる応用が期待される高機能性材料である。その機能を最大限に発揮するためには、転位の低減及び制御が必要不可欠である。転位低減の一つの方法として、産総研大曲らが発見した金属ドープによる金属援用終端法がある。本研究では、この金属ドープダイヤモンド成長による転位低減機構を明らかにし、更に高度化することで無転位に近いダイヤモンド膜を創製する。具体的には、一般的に市販されている単結晶ダイヤモンド中の転位密度(104~106 cm-2)を、パワーデバイスの実用化が達成されたSiCウエハ中の転位密度(100 cm-2)以下に低減することを目指す。
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研究実績の概要 |
金属ドープによる転位低減法は、単純なプロセスかつダイヤモンド特有の現象であり、その低減機構を明らかにすることは学術的に重要である。本研究では、金属ドープダイヤモンド成長によるダイヤモンド中の転位低減機構を明らかにし、更に高度化することで無転位に近いダイヤモンド膜を創製することを目的としている。 初年度である令和5年度は,主に熱フィラメントCVDを用いて、金属ドープダイヤモンド層の金属濃度を制御する技術開発を行った。成長面方位として、リンやボロンなどで比較的広い濃度範囲のドーピングが可能な(111)面を選択した。膜中不純物濃度に大きな影響を及ぼす成長速度・成長モードという観点で、熱フィラメントCVDでのエピタキシャル成長条件の基礎的な探索を行った。 フィラメント-基板 (F-S)間距離をパラメータとした際には、成長速度は距離の2乗に反比例で増加することがわかり、最高成長速度としてマイクロ波CVDを用いたダイヤモンド(111)の成長速度と同等の値が得られた。また、F-S間距離は、膜中金属濃度にほぼ影響を与えないことがわかった。一方で、メタン濃度をパラメータとした際、メタン濃度増加に伴い、成長速度は増加し、かつ二次元島成長モードから三次元成長モードへ移行し、表面ラフネスが減少することがわかった。表面ラフネスと成長速度の関係性は、MPCVDと逆の傾向であった。また、メタン濃度は、膜中金属濃度に大きな影響を及ぼし、3桁の幅で膜中金属濃度を意図的に制御できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題について,当初の計画通りの成果が得られている.本年度は、熱フィラメントCVD法によるダイヤモンド作製プロセスにおいて従来使用されているWやTaを用いて、膜中金属濃度制御を主軸とした研究を行い、その制御パラメータを明らかにした。今後の課題として,本条件で作製した金属ドープダイヤモンド膜の転位低減効果の検証があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を受け,膜中金属濃度を意図的に変化させたダイヤモンド膜の多角的かつ結晶学的な評価を行い、研究計画調書で提案した転位低減機構に関する仮説検証を行う。 最初に、金属ドープ層上に製膜したCVD層でエッチピットの評価を行い、転位の低減効果の検証を行う。転位低減機構の仮説検証のため、金属濃度に対する空孔濃度の計測を行う。空孔濃度の直接測定は、他材料では難しいとされているため、困難な可能性もある。その場合、外部分析もしくは窒素空孔欠陥の量として扱うことを考えている。最後に各金属濃度サンプルに対して、転位と応力の評価を行い、これまでの多角的評価と合わせて、転位低減機構の検証を行う。
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